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Let's play our music!【うた☆プリ】

第9章 素顔と音楽と



彼の様子がおかしくて、近づいて声をかける。

「大丈夫?どこか具合でも…」

「君は…おチビちゃんと組んでるんだったね」

「?そうだけど…今は」

「作曲のために、おチビちゃんのことを知りたい…だけなんだよね」

「…うん」

なんの確認をされているのか分からない。

私が翔のことを知って曲を作るのが、彼に何の関係があるのだろう。

うつむく神宮寺さんの顔をしたから覗き込んだ、その時。

「」

「っ?!」

神宮寺さんに突然腰を引き寄せられ、抱きしめられる。
広い胸に強制的に顔を埋めた私は、やや遅れてその状況に気付いた。

初めて呼ばれた名前と、彼の匂いが私の鼓動を速くする。

離れることを許さないとばかりに強い抱擁になす術もなかった。


「神宮寺、さん…?」

「ごめんね…レディ。でも今君を行かせたくないんだ」


おチビちゃんのところに。

告げられた言葉に頬が熱を持つ。

彼がフェミニストで、誰にでも愛を囁くと知っている。
でも、余裕のなさそうなこの腕や、やや掠れている彼の声は、果たして演技と言い切れるのだろうか。

あんまり私を惑わすようなことを言わないでほしい。

本気でそう思ってくれてるんじゃないかって、期待してしまうから。

私の心が、華を悲しませる方向に傾いてしまうから。


「…からかわないで」

「からかってなんかない。俺は…」

「からかってる!!」


心を制御しなければいけない。

私の学園生活のために、そしてあなたのために。


「初めて会った時から、ずっと…甘い言葉で私や春歌をからかって反応を楽しんでるんでしょう?」


私の大声に驚いたのか力の抜けた腕から抜け出す。
彼がそんな人じゃないと分かっているけど、そう言わないと私の心が決まってしまいそうなのだ。

必死に彼の言葉は嘘だと自分に言い聞かせて。

神宮寺さんだって、愛を囁く子羊たちの中に本気で彼を好きになった羊がいたら困るはずだから。

特別になりたいだなんて、思ってはいけない、と。


「楽しんでなんかいないよ、」

なのに神宮寺さんの行動は必死の私を惑わせる。
こんな時に名前を呼ぶなんて卑怯だ。

「少なくとも俺は…君をただのクラスメイトの1人だなんて思っちゃいない」

近づいて来る彼から今度は距離をとる。
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