Let's play our music!【うた☆プリ】
第9章 素顔と音楽と
サックスを手に戻ってきた彼は楽器のチューニングを開始。
そのやり方に年季が入っていて、長年サックスに触れているんだなと思うと少し嬉しくなった。
やっぱりこの人は多くの年月を音楽と過ごしているんだと感じることができたから。
「お待たせ、それでは聞いてもらおうか」
「タイトルは?」
「曲名かい?そうだなぁ…」
考えてなかったのか彼は少し考え込んでしまう。
やがて窓から空を見上げながら一言。
「世界の果てまで Believe Heart」
それは神宮寺レンの情熱そのものだった。
甘く、熱い彼の声に飲み込まれそうな身体を奮い立たせ、目を見開いて彼を見つめる。
艶やかな瞳に見つめられると、甘い痺れが私を襲った。
脳裏に、彼のサックスを聞いて腰砕けになっていた女生徒たちが蘇る。
確かにこんなの聴かされたら立っているので精一杯だ。
「神宮寺さん…」
神宮寺さんが眩しい。
アイドルだからだけではない、神宮寺レンという人間が、内側から光を放っていた。
これが、自分を解放した歌なのか。
己をさらけ出した歌は人を暴力的なまでに捉え、魅了する。
その強烈さに驚嘆すると共に、私も自分の曲で誰かに己をさらけ出させてみたい欲求が湧いた。
私の作った曲で、これほどまでに誰かを熱くしてみたい。
これまでにない作曲意欲が私を震わせた。