Let's play our music!【うた☆プリ】
第9章 素顔と音楽と
「神宮寺さん…?」
「何も焦る必要はないさ、まだ始まったばかりなんだ。失敗したならその先には必ず成功がある。だから、君は前だけを向いていればいい」
この人の温もりは物凄く安心できる。
それは、初めてペアを組んだあの時から感じていたこと。
首に回された腕にそっと自分の手を添える。
そうしたら、少しでも彼の温もりを感じられる気がして。
「その方が、君らしくて俺は好きだよ」
「私らしい?」
「あぁ…陰口を叩かれても見返してやろうって思える君らしい。きっと睦月麗奈なら何も感じずに無視するだろう?」
私らしい。
今、私の中で特別な意味を持つ言葉。
前を向いて進むことが、私らしいと彼は言う。
それが本当かどうかはわからないけど、自分を模索している私にとってそれは嬉しい言葉だった。
「それもそうだね」
「だろう?何も今までの自分を全て捨ててしまう必要はないよ、良い部分は残して、探していくといい」
「うん、ありがとう」
未来への不安がなくなったわけじゃないけれど、少し心が軽くなった。
本当に、この人にはお世話になりっぱなしだ。
感謝を込めて笑顔を浮かべると、神宮寺さんも同じように笑った。
どうしたら自分の作曲が出来るかなんてわからない。
だったらまずは色んな人の曲を聞いて感受性を高めよう、そう思えるくらいには心が晴れたようだ。
と、いうわけで。
「そうだ、神宮寺さんの歌を聞かせて?」
「俺の?」
「そう、この間聞けなかったから」
まずはこの人の歌を聞きたくなった。
突然の頼みに神宮寺さんは驚いたみたいだったけど、すぐに頷いてくれる。
「良いよ、サックスを取ってくるから、待ってて」
そう言うが早いか、彼は部屋を出て行った。