Let's play our music!【うた☆プリ】
第9章 素顔と音楽と
「変わった?私が?」
「あぁ、感情が素直に顔に出てる。前は、真面目な顔でいる時が多かったからね」
真面目な君も凛々しくて素敵だったけど。
ウインクしてくる神宮寺さんの言葉に、私は今までの自分を振り返る。
確かに学園でこんな反応を示したことはなかった気がした。
しかし、私の中ではこんな私でも違和感はない。
むしろ入学前の私はこんな人間だった気さえするのだ。
これが砂月さんの言っていたことかと、合点がいった。
「麗奈の、真似してたから」
「麗奈って睦月麗奈?」
「ん。…あの人が、私の目標だから」
今まで彼にはお世話になっているし、聞いてもらいたい。
ふとそう思った私はベッドに座り直して、彼に話を聞いて欲しいと頼んだ。
神宮寺さんは快く頷いてくれたので、ゆっくりと話し出した。
私が今まで、どれだけ馬鹿であったかを。
「…なるほどね」
「今思えば、初めて作った曲が麗奈に作ってもらったやつじゃないかって噂が立ったのもこのせいなんだと思う。あの人を意識しすぎて、あの人の曲みたいになったのかも」
「聞いてみるかい?君の曲」
「やめとく、今はまだ…整理がついてないから」
私はまだ自分の作曲を見つけられていない。
そんな時に麗奈に似た自分の曲を聞いたら、また影響されてしまいそうで嫌だった。
「私…これからどうしたら良いんだろう」
「レディ?」
「今まで自分が信じてきてたものが人のものだって分かって…自分が何なのかわからなくなっちゃった。こんな私が…作曲なんて出来るのかな…」
次から次へと溢れる不安。
それは自分への不信へと繋がり、未来に対する恐怖へと変わる。
「学園、やめなきゃいけなくなるのかな…」
最も恐れている未来を口に出すと、まるでそれが現実になってしまったような喪失感に襲われる。
失った寒さに自分を抱くと、ふわりとその上から私を包み込む温もりを感じた。
「大丈夫だよ、レディ」
「神宮寺…さん…?」
神宮寺さんが私を抱きしめていたのだった。