Let's play our music!【うた☆プリ】
第8章 眠る君に〜side神宮寺レン
そして俺の退学騒動。
殴った聖川、破り捨てた歌詞の紙を探しに行った子羊ちゃん。
俺を諭すより何より、音楽を馬鹿にするなと怒った。
言われたとき、母の記憶が蘇った。
歌っていた母、輝いていた母。
そんな母が紡ぎだす音楽が好きで、その影響もあってか俺は音楽によく触れていた。
サックスと出会い、楽しくて吹きまくった。
そんな日々を、の平手打ちが思い出させた。
長男の兄に言われて入ったこの学園ということで、真面目にやる気なんてさらさらなかった。
楽しくない毎日に飽き飽きして。
龍也さんに退学を示唆されたとき、それもいいかもしれないと思った自分がいたのだ。
聖川に殴られたときだって、感情は少しも動かなかった。
そんな俺を渾身の一発で変えた、彼女。
そんなが俺の中で大きくなるのに、そう時間はかからなかった。
放送室をジャックして行った演奏は、もちろん子羊ちゃんに聞いてほしかったものではあったが、にも聞いてほしかったのだ。
しかし当の本人が熱で欠席していたためそれは叶わず。
仕方なしに子羊ちゃんに伝言を頼んだが、どうしても自分の口で伝えたい。
そんな思いが俺を突き動かし、気づけば俺は彼女の部屋のそばの木の枝に来ていた。
俺としたことが、クールじゃないねぇ。
この思いが恋かどうかは確信が持てない。
そもそも1人の女生徒にこれだけすること自体が中々なくて、自分でもどう制御すればいいか分からない。
だからとりあえずは心のままに動いてみることにした。
俺が部屋に現れたことに彼女は物凄く驚いていた。
普段冷静を心がけている姿からはかけ離れた姿に笑うと同時に胸が温かくなる。
違う一面の彼女を見れたことが、やけに嬉しかった。
それから話は今日の話へ。
サックスを吹いていた楽しさをついつい語ってしまうと、和やかな空気が生まれた。
その流れで思わず意地悪なことを言ってみると、彼女は肩をすくめてごめんと笑う。
冗談だとわかっているからこその笑いだったが、その笑いが俺には太陽のように輝いて見えた。
それはきっと、先日俺が泣かせてしまったから。
俺の手で泣かせた彼女を、今度は笑顔に出来たから。
その笑顔が、あの日愚かだった俺を許してくれているようだったから。