Let's play our music!【うた☆プリ】
第8章 眠る君に〜side神宮寺レン
「とりあえず皆、車に行こう」
自分の悔しさはさておき、皆を待たせてある車に案内する。
と、その手前であることに気付きおチビちゃんに近付く。
「?」
「おチビちゃん、レディは俺が運ぶよ」
半ば奪うように彼女を抱きかかえて歩く。
後ろからおチビちゃんの抗議が聞こえたが、無視をさせていただいた。
そうして今に至る。
どうやらの体調があまり良くなさそうだったから、近くにある俺の家の1つに彼女を連れて来たのだ。
子羊ちゃん、おチビちゃん、シノミーには先に学園に戻ってもらい、俺らが遅れて帰ることを伝えてもらうことにした。
医者に診てもらうと、先日の熱が少しぶり返したようだが大したことはないと言われたので一安心する。
穏やかに眠るの髪を手で弄ってみる。
さらさらと指からこぼれ落ちるそれは柔らかい。
唇を寄せると彼女のシャンプーの香りだろうか、甘い匂いが鼻孔をくすぐった。
「ねぇ、レディ…君は罪な女性だね」
耳元で囁くと、くすぐったいのか彼女は身をよじる。
その反応がやけに可愛らしく見えて、自然と笑みを浮かべた。
初めて会った時の彼女はどこか大人びた印象を持っていた。
でも、履歴上他のクラスメイトから白い目で見られる彼女。
それを1番最初にパートナーに誘ったのに、あまり理由はなかった。
ただ、華の友人だから興味を持ってみただけ。
まぁアイドルであるの曲を聞いたことがあったというのも含まれてはいたが。
クラスメイトの目など気にしていないように姿勢だけは伸びていたが、視線は逃げるように俯いていた。
アイドル経験を持つから、イッチーのように完璧な人間なのだと思っていた彼女が、やけに小さく弱々しく見えて、気が付いたら手を差し伸べていた。
打ち合わせをしていたときに初めて見せてくれた笑顔は年相応の少女のもの。
あれが、彼女を華の友人以上の興味を持たせるきっかけだった。