Let's play our music!【うた☆プリ】
第8章 眠る君に〜side神宮寺レン
「やれやれ…無茶する子だね、君は」
外の雨とは無縁の静かなとある家の中。
眠る彼女、を柔らかいベッドに寝かせた俺は近くの椅子に座って彼女を眺める。
雨が強くなってきたからとデートしていたレディ達と別れて歩いていた俺。
収まる気配のない雨を見上げると、ふと今日出かけているらしい他のメンバーのことを思い出した。
この雨だし、車で一緒に帰ろうか。
そんなことを思ってしまうあたり、俺は相当あの空間を心地よく思っているらしい。
退学しても構わないとさえ思っていたのに、その件での七海春歌を始め多くの人が自分の退学を阻止しようと頑張ってくれたあの時から、少しずつ学園生活が楽しくなってきていた。
"音楽を、馬鹿にしないで"
華の友人として紹介された彼女。
友として見ていたの存在が少し大きくなった言葉を聞いたのもあの時だった。
「っ、神宮寺さん!」
おチビちゃんに居場所を聞き、車を回してもらってライブ会場に到着すると、そこには子羊ちゃん…もとい七海春歌がいた。
「やぁ、子羊ちゃん。そっか、ここがHAYATOのライブ会場だったんだね」
「はい、そうなんです…けど、あの、」
話す彼女はどこか歯切れが悪い。
ちらちらと周りを気にしながら、何か言おうとしているようだ。
よく見ると春歌は自分のカバンの他にもう1つカバンを抱えている。
しかもそれは、先程見たのもののように見えた。
「子羊ちゃん?」
「あ、レン!来てくれて助かったぜ!」
「あぁ、おチビちゃん…?!」
そんな彼女は翔の声が聞こえた瞬間にばっと振り返る。
おチビちゃんが気になっていたのかという結論を得た俺はどうしたのだろうと彼を見やると、
驚愕した。
「え、…レディ?」
がおチビちゃんに姫のように抱かれてぐったりと眠っていたのだ。
「レンくん、こんにちは〜」
「シノミー…彼女は、どうしたんだい?」
「倒れちまったから救護室で休ませてたんだよ」
2人に傘を傾けているシノミーが、は頑張りすぎちゃったんですね、と眠る彼女を優しく撫でる。
別れた後に何があったのだろう。
俺がその場にいたら、倒れてしまう前に支えていたのに。
支えて、いたかったのに。
いなかった自分がただ歯痒かった。