Let's play our music!【うた☆プリ】
第1章 それがすべての始まり
そうして、レイジングエンターテイメントにやって来て1年半が過ぎた。
私は今、芸能界のヒエラルキーで見るとそこそこの地位にまで登りつめてしまっている。
アイドルとして歌番組への出演はやむを得ないが、バラエティーなどの出演は断固として断った。
レイジング社長は不満だったらしいけど、そこは何とか納得してもらった。
しかし歌番組に出演する以上、他所のアイドルとの関わりもまぁあるわけで。
今日はシャイニング事務所という私達と同じくらい勢力を伸ばしているところのアイドルの方々と一緒の仕事で、食事に誘われていた。
「それにしてもちゃんって綺麗ね〜、何歳?」
「17です」
「若っ!やっぱり若さよね〜!」
女顔負けの女装と女子力で人々を魅了する、月宮林檎さん。
「あんまり若さ若さ言わないでよっ嶺ちゃん悲しくなるから!」
持ち前の明るさとトーク力でムードを作る、寿嶺二さん。
「いえいえ。寿はそのままで十分ですよ、若くてさらに騒がしい貴方など耐えられません」
「ミューちゃんそれ褒めてないよね?!」
外国シルクパレスの伯爵にして執事キャラ、カミュさん。
どの人も流石アイドルと言わんばかりのオーラで自分の場違いさが身に染みる。
アイドルである己に誇りを持っている人達と嫌々アイドルをやっている私とでは、並んでみても違いは一目瞭然だろう。
けれどそんな私に気付いているだろうに皆さん優しくしてくれて、その優しさもまた身に染みた。
「ちゃんは麗奈ちゃんとコンビなの?」
「一応2年間だけ組ませてもらってます」
「勿体無い!2人相性いいと思うよ?そのまま組めばいいのに」
詰め寄ってくる月宮さんと寿さんに苦笑を返す。
1年半彼女の様々な曲を歌ってきて、麗奈の曲と私の声質が合っていることくらい、私が一番よく知っていた。
このままでも良いんじゃないかと思ったことも少なからずある。
その度に自分の夢は作曲家じゃないかと言い聞かせて。
そのうち、一つの思いが湧き上がってきた。
結局私は何になりたいんだろう、と。
そんな迷いを抱えたまま、カミュさんの「そろそろ時間ですね」という言葉に立ち上がり、皆さんと一緒に楽屋入りをした。