Let's play our music!【うた☆プリ】
第1章 それがすべての始まり
そして、未だ答えは出ないまま。
約束の2年が経とうとしていた。
「…どうしよう…」
麗奈とのコンビも楽しい。
でも作曲の楽しさも捨てきれない。
どちらが自分に向いているのか分からなくて、どちらの才能が秀でているのかも分からない今、答えまでの道は果てしなく遠いように思える。
まるで砂漠でも歩いているかのような呆然とした思いを抱きながら、スタジオの廊下を歩いた。
明確な材料が欲しい。
私の歌手としての才能、作曲家としての才能、そのどちらが優れていて、私に合っているのか。
しかしそんな都合の良い何かがあるわけがない。
「はぁ…」
ため息と共に曲がり角を曲がったその瞬間。
「っ…?!」
「うわっ」
誰かにぶつかった私は盛大にこけた。
相手も驚いたようで、手に持っていたと思われる紙の束が落ちて散らばる。
「あっ…ごめんなさい!」
「いえ、こちらこそすみません。不注意でした」
慌てて謝り紙を拾い集め、ぶつかった相手に渡そうとしたが、ふとその手が止まる。
「…早乙女学園?」
「興味があるんですか、そこに」
ぶつかった男性が持っていたのであろうチラシに書かれていた字を読むと、彼はそう尋ねてくる。
何となく興味が湧いた私はどんな学園なのか聞いてみることにした。
「早乙女学園。歌手や作詞家、作曲家の育成に特化した芸能専門学校です。実際にそこからは多数の有名アーティストを輩出していて、倍率は200近くになります」
「に、200?!」
とんでもない学園だ。
そんな競争を潜り抜けた生徒が人気アイドル、作曲家になるのは当然といえば当然だろう。
違う世界とも思える話に唖然とした私だったが、すぐに平静を取り戻すと、あることに気付いた。
「てことはそこでは作曲の勉強が出来る…?」
「えぇ。実際に歌手志望の生徒と組む授業もあるので自分の曲の出来もわかると思いますよ」
彼の言葉に今まで真っ暗に思えていた道に光が射した気がした。
早乙女学園、そこなら決められるかもしれない。
作曲家か、
歌手か。
どちらが本当に私のなりたいものなのか。
その瞬間、私の心は決まった。
作曲家志望なのですか、と尋ねてきた青年に私は笑って返す。
「それを、決めに行きます」
200近い倍率なんて関係ない。
私は早乙女学園に入って、私の未来を決めるのだと。