Let's play our music!【うた☆プリ】
第7章 本当の自分
「証拠ならある」
砂月さんは頬のすぐそばで私の手を掴み、止める。
そのまま引っ張られて、私は彼の胸に飛び込む形となった。
「何を…!」
「お前、リボンはどうした」
「は…?っ、痛!」
砂月さんの胸を押し返そうとした時、髪を持ち上げられる。
投げかけられた質問の意味が今ひとつ理解できず、顔を上げようとした私はさらに強く髪を引かれたことで制された。
「さっき那月と柄を揃えて買ったリボンはどうしたって聞いてんだよ、着けてただろうが」
「っ…かばんの、中だけど」
「それが証拠だ」
言っている意味がわからない。
私がリボンを外すことが、自分に嘘をついているという何の証拠になるだろう。
我慢して背伸びしているという彼の主張の、何の裏付けになるというのだ。
「那月と話してたとき言ったよな、可愛いもの好きだって」
「…そうだよ」
「なのに着けてない」
「似合わないから、私には」
「違うな」
髪から手を離されたことでバランスを崩しよろめく。
ふらついた手を再び掴まれると、今度は上に引っ張られ、強制的に彼と視線を合わせる位置まで顔を上げられた。
再びあの見透かされそうな視線が私のそれと絡まる。
途端に金縛りのように動けなくなった。
嘘をつくことは許さない。
全身からそれが伝わってきて震える。
激しさを増して降り続ける雨音なんて気にならないくらい、私は彼の世界へと入り込んでいた。
「似合わないから、じゃねぇ。睦月麗奈がそういうのを着けないから、だ」
慣れていて感じることのなかった重みが、肩にのしかかる何かが、体を縛る何かが、ほんの少し薄れた気がした。
「麗奈…?」