Let's play our music!【うた☆プリ】
第7章 本当の自分
「ちっ…あとの2人はどこだ?」
「さ、さぁ…」
砂月さんに返事をしながらも視線は床を彷徨う私。
探しているものはもちろん、彼の眼鏡である。
さっきはぐれていた間に人にぶつかった衝撃で取れてしまったのだろう。
「とりあえず行くぞ、ステージだ」
「へ?な、なんでステージなんかに…!」
「それが目立つからに決まってんだろ、あと…あいつは気にくわねぇ」
再び彼に腕を引かれて人ごみの中を歩く。
まさかステージに上がって彼らに気づいてもらうために叫ぶなんて言いださないよね、とビクビクしているとふいに気になる言葉が聞こえた。
「あいつって…HAYATO?」
「あぁ…あの歌い方はムカつくな、なんか腹のなかに溜め込んで我慢してらしくねぇことしてて腹立つ」
散々な言い方だ。
けれど、確かに春歌も彼の曲ではないと言っていた。
私にはわからない何かを、2人は感じているのだろうか。
「気に入らねぇといえば…
てめぇもな」
「え?」
砂月さんの瞳がまっすぐと私に向いている。
その瞳には、侮蔑とも哀れみとも嘲笑とも取れる、複雑な感情が浮かんでいた。
「私…?」
「あぁ、お前もそうだ。我慢してらしくねぇことして背伸びしてる、んなことしたって、望みは叶わねぇよ」
向けられる瞳が私を見透かすように細まる。
思い当たることなんて何1つないのに、砂月さんの視線に耐えられなくなって顔を背けた。
「私は…我慢なんかしてない」
「してるさ、春からずっと。那月を通してお前を見てたが、少なくとも俺が見てた時はいつだってお前は自分に嘘をついてた。いい加減素直になっちまえよ、今よりずっとやりやすくなる」
「何を証拠にっ…」
「認めろよ、だから作曲も上手くいかないんだろ。このままだとお前、成績悪くて追い出されるぜ?」
「っ、あんたに私の何が分かるの!!」
気がついたら彼の手を振り払って叫んでいた。
こんなに大声を出したのは久しぶりだと、場違いなことを思う頭とは裏腹に、身体は感情的だった。
つかつかと砂月さんに歩み寄り、片手を振り上げる。
「いい加減なこと言わないで!!」
勢いよく彼の頬に向かって振り下ろした。