Let's play our music!【うた☆プリ】
第7章 本当の自分
「睦月麗奈はそういった系統のものはつけない。それをお前が無意識に真似てんだよ」
「……」
あんなに高ぶって、苛立っていた感情が冷静になる。
火照っていた身体から、一気に熱が引いていった。
取り憑かれていた霊から、解放されたかのように。
「自覚あるか?」
「……初めて、知った」
大人しくなった私を見て砂月さんは掴んでいた手を離す。
ようやく自由になった身は、彼の質問に対して至って素直に返した。
頭で考え、組み立てるよりも早く唇が動き、言葉を紡ぐ。
それは私さえも忘れていた、私の本音だった。
「けど、そうなのかもしれない。私の根底には、あの人に追いつきたいってことしかなかったんだね」
だから、作った曲はどうしても薄っぺらかったんだ。
初めに神宮寺さんに作った曲さえも。
「私がここに来た理由も…麗奈だったんだから」
今まで私だと思っていたものが、崩れていく。
そこには何が残っているのだろう。
「分かりゃ良いんだよ」
頭に感じる重み。
ゆっくりと髪を撫でられて、それが砂月さんの手だと気付いた。
「お前がお前の曲を作るのを、楽しみにしてるぜ」
「…ありがとう」
口も悪くて、口より先に手が出てしまう彼だけど、撫で方は壊れ物を扱うように優しかった。
「だから、そこで俺の歌を聞いとけっ!!」
ステージに駆け上がる砂月さん。
未だ降っている雨などものともせずにマイクを握り、どこからともなく流れてきた音楽に合わせて息を吸い込む。
それは、紛れもなく彼の叫び。
本心の、SHOUT OUTだった。
「はは…砂月さんは、すごいなぁ」
「痛いくらい刺さってくるよ、今の私には苦しいくらいに」
自分を偽っていたことさえ気づかなかったわたしには。
私も、叫びたい。
激しい彼の歌を聴きながら、そのまま意識を手放した。