Let's play our music!【うた☆プリ】
第7章 本当の自分
「HAYATO…?」
「どうしたの、HAYATO」
「歌って!」
会場の、アイドルの異変に気付いたのかファンの声が彼を求め始める。
彼を呼ぶ観客の声は次第に大きくなっていった。
「HAYATO!!」
その声に感化されたのか、突如鳴り響く雷鳴。
光と音の間隔は非常に短く、落ちた地点がすぐそばだということを知らされる。
と、同時に照明が落ちた。
「?!」
「照明に雷落ちたか…?」
「わかんない、安全のためかも」
不安で辺りを見渡すも、スタッフ側も混乱しているのだろう、指示は今の所ない。
とりあえず待機しようと翔に言われ、大人しく待つことにするも不安は増すばかり。
HAYATOもスタッフに誘導されて裏に引っ込んだようでステージはしんと静まり返っていた。
翔と曲の打ち合わせをするつもりで外に出たのに、散々な1日だ。
ため息とともにふと空を見上げると、額に水滴が当たった。
「あ…」
雨も降ってきた。
それも結構土砂降りな。
「やだ、傘持ってきてないのに!」
「早く帰ろ!」
それを皮切りに座っていた客が次々に立ち上がり、一斉に出口を目指す。
その波に飲まれた私たちは互いを見失ってしまった。
「っ、翔!春歌!四ノ宮さん!」
必死に叫ぶも返事はない。
反対方向に進もうにも大勢の人の力には勝てずに流されてしまう。
自分が今どこにいるのかもわからない。
「すみません、通して下さいっ…!」
予期せぬ雨で人は我先に帰路に着こう、雨を凌ごうと先を目指す。
そんな人たちをかき分けることなど出来るはずがなく、ありとあらゆる方向からやってくる人に押しつぶされそうになってしまった。
なんとか進もうと足掻いて伸ばした手。
その手が空を裂き、力尽きて下に垂れようとした瞬間。
誰かにその手を掴まれた。
「うわっ…?!」
誰だかわからない力強い手に引っ張られ、何とか足を動かし人混みから抜け出す。
どっと疲れが押し寄せてきて思わず地面にへたり込んだ。
ずんずんとこちらのペースを考えずに進むその人に、とにかく礼を言おうと息を整えると不意に頭上に影が落ちる。
「あんま手間掛けさせるんじゃねえよ、女」
「さ、砂月さん…?!」
どこかで感じたデジャヴ。
首を傾げながら上を向くと、そこには眼鏡のかけていない四ノ宮さん…砂月さんがいた。