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Let's play our music!【うた☆プリ】

第7章 本当の自分



「シノミー?見てないな」
「そっか…ありがとう、それじゃ」

邪魔してごめんと彼のそばにいる女性たちを一瞥して背を向ける。

と、その腕を掴まれた。

「待って、レディ」

「…え?」

振り向くと神宮寺さんの表情はどこか焦っていた。

行かせたくない。

そんな言葉が聞こえてくるようなくらい。

「どうしたの?」
「えっ、あ…いや、そのリボン可愛いね、似合うよ」

自分でも予想外の行動だったのだろう。
彼はぱっと手を離すと苦し紛れにリボンに触れた。

適当に話題を探しただけだと思うけど、似合うという褒め言葉は素直に嬉しかった。
可愛いものを着けて褒められることは、あまりなかったから。

ありがとうとついほころんだ顔のまま告げる。
それを見た彼はふいと横を向いて曖昧な返事を返した。

その様子に首をかしげた私を現実に引き戻したのは、突然耳に入ったきた音楽だった。

それはビルのモニターから流れてきた携帯のCM。
現在人気のアイドルが歌って踊っている映像がエンドレスで流れ続けるよくある光景。

でも、ただ1点が私に強烈な影響を与えた。

「麗奈の曲…」

初めて聞くものでも間違えるはずがない。
ずっとそばで聞いてきた、目標の人物の曲を間違うはずがない。

「すごい…」

スピーディで、曲に翻弄されてしまうと思いきや優しく受け止めるようになだらかなフレーズが始まる。

最初から最後までエンターテイメント性に優れた強い印象を残すそれは、聞く人を魅了した。

「…流石だね、彼女は」

神宮寺さんも息をついてそう評する。

そう、彼女はプロなのだ。

自分より遥か高みにいる現役作曲家なのだ。

負けていられない。

尊敬と同時に押し寄せる嫉妬、悔しさ。
それらを全て飲み下し、当初の目的に戻ろうと神宮寺さんと別れた。

再び走りだし、四ノ宮さんを探し始める。

「…こんなこと、してる場合じゃなかったね」

早く、早く追いつかなきゃ。

あの人の隣に並びたいと思ってここに来たのだ。

「可愛さなんて、求めてる場合じゃないんだ」

するりとリボンを解くと、結い上がっていた髪がなびいて下に落ちる。

リボンをちらりと見てから鞄にしまう。

四ノ宮さんの気持ちは、言葉は嬉しかった。

でも、麗奈に近付くにはこれを一旦忘れなければいけない。


大人に、ならなきゃ。
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