Let's play our music!【うた☆プリ】
第7章 本当の自分
さっきは翔にピンをつけるために全力疾走した。
今は、
四ノ宮さんにメガネをかけるために全力疾走中である。
「翔!私あっち探すから!」
「わかった、見つけたら連絡な!」
メガネを翔に預け、二手に分かれる。
たくさんの人の中からたった1人を探し出そうと目を光らせながら、先程の会話を思い返した。
「砂月?」
「あぁ、さっきのメガネを外した那月、それが砂月だ」
「…人格が、変わるの?」
「色々あってな、でも問題はそこじゃない。砂月は力が強くてなかなかに気が短いから…下手したら暴力沙汰を起こしかねない」
「それは…まずいね」
「おう、だからいくぞ!」
四ノ宮さん…砂月さんは確かに那月さんの方とは違った。
刃のように鋭い雰囲気で、どこか人を威圧する彼は正直なところ真反対にすら感じる。
きっと間近で見たら恐怖も感じてしまうのだろう。
「早く探さなきゃ…」
焦って周りを見渡す。
いくら見ても彼の綺麗な柔らかそうな金髪は見つからない。
その代わり。
「じ、神宮寺さん?!」
「おや、レディ。奇遇だね」
炎のようなオレンジの髪を持つ彼を見つけた。
だが、声をかけるのには躊躇いがあった。
彼の周りには見知らぬ女性がたくさんおり、話せば睨まれることはわかっていたから。
それを四ノ宮さんのためだと己を叱咤し、なんとか声をかけたものの、その鋭い視線には冷や汗ものである。
しかし、それと同時に胸に鋭い痛みが走った。
知らない女性と仲よさげに話し、甘い言葉を囁く神宮寺さんを直視できない。
恥ずかしさでも嫌悪感でもない、もっと黒くてドロドロして、熱い何かが心を支配し締め付ける。
「どうしたの?こんなところで」
「ちょっと…翔と四ノ宮さんといたんだけど…」
「おチビちゃんと、ね」
「あ、そう!神宮寺さん、四ノ宮さん見ませんでした?!」
翔の名を出した時、一瞬彼の顔が陰った。
それはあまりにも短い出来事で、すぐに彼はいつもの笑みを浮かべたから、気のせいだったのかとさえ思う。
でも、きっと気のせいじゃない。
なぜだか私には、そんな確信があった。
それは"彼が翔に嫉妬していたらいいのに"という、ただの願望かもしれない。
それでも、そう思いたくて。
思い出そうと顎に手を当てて考える神宮寺さんの表情に、陰った顔の面影を探した。