Let's play our music!【うた☆プリ】
第7章 本当の自分
「わぁっ…可愛いですねぇ〜!」
「四ノ宮さんはこういうのが好きなの?」
「はい!小さくて可愛いものが好きです」
「お前ら楽しそうだなぁ、あんまり大声出すなよ那月」
「はぁーい!!」
「だから大声出すなって…!」
四ノ宮さんと翔の掛け合いはすごく楽しかった。
気の置けない関係というのだろうか。
互いに気兼ねなく言い合う様ははたから見てもほのぼのとしていて、翔は怒っているのに、申し訳ないけど笑ってしまった。
「これ、可愛い!」
「本当ですね〜、お揃いで買いませんか?」
「良いの?!」
「はい!」
私も私で店を堪能していた。
普段身につけることはないが可愛いものが嫌いな訳じゃない。
ただ似合わないから避けているだけ。
でもそれを聞いた四ノ宮さんが、
「似合いますよ!もとーっても可愛いですから!」
と言ってくれたことが嬉しくて、その日気が緩んでいた私はピヨちゃん柄のリボンを、四ノ宮さんは加えてピンを買った。
店の外に出て、買ったものを翔に見せていると、四ノ宮さんがリボンで私の髪を結ってくれた。
ありがとうと礼を言うと四ノ宮さんは笑顔を返してくれる。
その手にはしっかりとピンが握られていて。
着けるのだろうかと首をかしげると彼はそれを持って翔のところへ全力疾走。
彼が何をするつもりなのか意図を理解すると、好奇心から結果が気になってしまう。
着けてもらったリボンに触れて笑みをこぼすと、乱闘を繰り広げる2人の元に駆け寄った。
「!那月止めろよ!」
「え?私も見たいな、翔がピヨちゃんのピンつけてるとこ」
「お前も敵かー!!」
「翔ちゃん、暴れないで!ピンが曲がっちゃいますよ」
「知るか!やめろ!」
必死に髪を庇う翔とピンを持って迫る四ノ宮さんの戦いは終わらない。
それを傍観していた私の眼の前で、それは突然に終わりを告げた。
翔の手が四ノ宮さんの顔に当たり、彼のメガネが落ちる。
何の気なしにそれを拾おうと手を伸ばすと、上に覆いかぶさる影に気付いた。
「え?」
「どけ、女」
それは四ノ宮さんだった。
全く違う雰囲気をまとう、四ノ宮さんだった。
「やべっ!」
翔が焦ったような声を上げた途端、四ノ宮さんは走り出しどこかへと姿を消してしまう。
あとには呆然とした表情の私達と、四ノ宮さんの眼鏡だけが残された。