Let's play our music!【うた☆プリ】
第6章 それは春のように
「…?」
「あ、起こした?」
「友ちゃん、春歌…」
次に目を開けると、目の前には友人2人の心配そうな顔があった。
授業の後、お見舞いに来てくれたのだろう2人の手には、薬やら何やらの入った袋がぶら下がっていて。
「思ったより顔色が良くて良かった!なんか食べる?どうせ何も食べてないでしょ」
「消化しやすいもの、買ってきました!」
授業で疲れてるだろうにわざわざ来てくれた2人は、甲斐甲斐しく世話を焼く。
それに甘えて春歌の買ってきたゼリーを食べると、友ちゃんがそういえばさぁと手を叩く。
「凄かったね、神宮寺さんのあの演奏!」
「はい!」
突然耳に入る今最も気になっている人の名前に反射で顔が向いてしまった。
その様子で私が知らないことを思い出した彼女は、にっこり笑って教えてくれた。
「神宮寺さん、学園やめなくてすんだみたい」
放課後、放送室をジャックして披露された彼の歌は、何か吹っ切れたような、明るさがあったという。
その歌の出来栄えに日向先生も納得し、彼の在学は認められたそうだ。
「そっか…良かった」
その事がひどく私を安堵させる。
彼が音楽を捨てないでくれたという事が、やたら私を嬉しくさせた。
「なになに〜ってば嬉しそうだな〜」
「え?べ、別にそんなことっ…」
慌てる私をつつく友ちゃん。
身をよじりながら弁解しようと口を開いたのを、春歌が突然遮った。
「あ!そういえば神宮寺さんから伝言があるんです」
「伝言?私に?」
首を傾げる私に春歌は嬉しそうに微笑む。
どうやら春歌は私と神宮寺さんの間にあった1件は知らないようだが、その直前に行われた聖川さんと神宮寺さんの諍いについて何か知っているらしく、おおよその見当がついているようだった。
「ありがとう。君のおかげで思い出せた」
「自分が、音楽を好きだって…」