Let's play our music!【うた☆プリ】
第6章 それは春のように
次の日、私は熱を出して学校を休んだ。
「ゆっくり休みなね、ノートは取っとくから」
「ごめん、華…」
額に冷たいタオルを置いて横になる私にひらひらと手を振った華は部屋から出て行く。
それを見届けると、室内は静寂に包まれた。
「…暇だな…」
今まで課題やら何やらに追われて眠った気がしない毎日を送っていた。
久しぶりに過ごすゆったりとした時間は、逆に物足りなく感じてしまう。
今頃皆は何を習っているんだろう。
春歌や友ちゃん、華、翔…。
そして…。
「…何で、あの人のことが…」
脳裏に蘇るのは昨日喧嘩、らしきものをしたあの人。
あの人は…どうしているだろう。
本当に、この学園をやめてしまうのだろうか。
「嫌だな…」
言ってから自分で驚いてしまう。
どうして、こんなに嫌だと思っているのだろう。
神宮寺さんがアイドルを目指そうが目指さまいが、私には何の関係もないのに。
華が悲しむから?
違う、そんな理由じゃない。
「…神宮寺さん…」
呟いた名前はやけに切ない響きを持って消える。
同時に、胸が締め付けられたように苦しくなった。
こんなこと考えるのはやめよう。
これ以上考えていたら何か後悔する気がする。
そんな不安に駆られた私は携帯に手を伸ばす。
気を紛らわせようと表示したのはメールの作成画面。
翔に今日また曲の打ち合わせをするつもりだったのを思い出したのだ。
"ごめんね、明日までに曲を形にするから"
出来上がったメールを送信するとすぐに返事が来る。
"無理すんなよ!もうすぐ休日だし、打ち合わせがてら遊びに行こうぜ!"
私のことを気遣う文面に笑みがこぼれた。
本当に、彼は優しい人だ。
友のことを、仲間のことを大切に思う、男気溢れる人。
「ありがとう、翔…」
今頃熱心に授業を聞いているであろう彼に礼を告げながら、静かに眠りについた。