Let's play our music!【うた☆プリ】
第5章 信じてる
暫くすると、課題の件で話したいと翔くんからメールが来る。
断る理由もないから承諾したけれど、頭の中はさっきの話でいっぱいだった。
夕焼けの下、翔くんと2人で話す。
「テーマは"別れ"か。これまた難しいもんやらせるなー」
「うん…」
「とりあえず別れっても色々あるし、そこ決めるとこから始めようぜ」
「うん…」
「…」
「…」
「…?」
顔を覗き込まれてはっと我に帰る。
自分が翔くんとの打ち合わせ中なのに心ここに在らずだったことに気付いた。
「ご、ごめん、飲み物買ってくる!」
「お、おい!」
それが恥ずかしくて、申し訳なくて、頭を冷やそうとその場を離れた。
なのに。
「やぁ、レディ」
「…じ、神宮寺さん」
頭を冷やすどころか頭を占めている当の本人と出会ってしまった。
しかし先程までと違って、口元に痣がある。
殴られたものだと気付くと、思わず手で触れてしまった。
「大丈夫?」
「…優しいね、君は」
「どうしたの、それ?」
「聖川にね」
聖川さんに殴られたなんて信じられなかった。
目を見開く私から離れると、彼はそこを軽く撫でる。
「良いんだ、いい土産になる」
「…この学園、辞めるの?」
「ああ、どうせ望んできたわけじゃない。こんなところで時間を無駄にしないで、有意義に時間を使うさ」
その言葉に、頭が真っ白になった。
体温が急速に下がったように、何もかもを冷たく感じる。
やけに冷静な頭が作り出した言葉をそのまま口に出す。
「本当にそう思ってるの…?」
音楽が好きで来たと思ってた。
以前ちらりと聞いたサックスの音色は好きじゃないと奏でられないものだったから。
私が作った曲に作詞してくれて、歌ってくれた彼はきらきらと輝いていたから。
手を差し伸べてくれたこの人と共に音楽の道を進みたいって、麗奈以外に初めて思ったから。
だから信じてた。
この人は、音楽から離れられないって。
「ああ。俺は音楽なんてものに時間を費やす暇はない。こんなもの…習って何になるんだい」
だから、その人から、そんな言葉聞きたくなかったんだ。
「っ!」
気付くと私は彼を叩いていた。
「音楽を、馬鹿にしないで」
音楽を蔑むような言葉なんて、言わないで。