Let's play our music!【うた☆プリ】
第1章 それがすべての始まり
家に届いた1通の手紙。
そこにあったのは短い文章と添付された地図。
「合格、準所属決定…」
全くもって文の意味が理解できなかった。
私は何かの審査を受けた覚えはないし、そこに書いてある"レイジングエンターテイメント社"についても何も知らなかったから。
その後家を訪ねてきた麗奈に駄目元で聞いてみると、彼女はあっさり白状した。
「私が所属する事務所だけど」
「…いや、そこから何で手紙が来るわけ?」
「私がこの間の曲を送ったから」
「…つまり?」
「あなたはレイジングエンターテイメントの準所属アイドルになったってこと」
なぜこの間の曲を勝手に送ったのかとか、なぜ私に確認を取らなかったのかとか、聞くべきことは沢山あった。
しかし当時私の頭にあった疑問と怒りはたった1つしかなかった。
「…アイドルってどういうこと」
私がなりたいのは作曲家だ。
歌うことも好きだがそれは彼女が作った曲に限る。
それを彼女自身も知っているだろうに、なぜそんな事をしたのだろうか。
不満が顔に出ていた私を見てため息をついた麗奈は、出していた紅茶を一口飲むと静かに口を開いた。
「レイジングが欲しがってたのは作曲家じゃなくてアイドルだった。私が勝手に申し込んだのもアイドルのオーディションだしね」
「…」
「あとね、私は私の曲を誰よりも上手く歌える人間とパートナーを組みたいと思ってたの」
「…それが、私?」
「ええ、沢山の人と組んでみたけど、が1番だった」
それは普段あまり人を褒めない彼女から出た褒め言葉だった。
私はそれを喜ぶべきだったのだろう。
でも、内容が内容なだけに素直に受け入れることは当時の私には出来なかった。
「…ねぇ、あなたの夢を知ってるのにこういうことをして申し訳ないとは思う。でもあなたが私の曲を好きなように、私はあなたの歌声が好きなの」
肩に手を置いて訴えてくる麗奈の目は真剣だった。
その意志の強さに、たじろいでしまう。
「準所属ってね、正式にアイドルになったわけじゃないの。2年のうちにデビュー出来なかったら即解雇」
「…解雇」
「だから2年だけ。2年だけ、私のパートナーやってくれない?」
デビューしてもしなくても、2年経ったらパートナー解消。
それを条件に、彼女の視線に負けた私は仕方なく頷いた。