Let's play our music!【うた☆プリ】
第4章 それが芸能界
神宮寺さんと別れて歩く。
華はまだ彼に用事があるようで、あの場に残った。
急に静かになった自分の周りをほんの少し寂しく思っていると。
「…聖川さん?」
「お前は、確か…」
湖のほとりに、聖川財閥の御曹司が立っていた。
考え事をしていたようだったからその場を去ろうかとも思ったが、彼が私を手招いたので大人しく近寄る。
「お前は七海の友人だったな」
「え?あ、うん」
「最近の七海をどう思う」
直球の言葉に彼の方を向く。
対する彼は私など眼中にないようにじっと湖を見つめていた。
そのまっすぐな瞳は湖と同じくらい清らかで。
「…何かに、悩んでるように見えるかな」
「そうか…やはり分かるか」
黒板に書かれた言葉を思い出す。
Aクラスの授業で何があったかは分からないが、生徒が春歌の入学に疑念を抱いているのは確かだった。
「何があったの?」
「…最初の授業で、ピアノが弾けなくてな」
聖川さんはそれからのことを掻い摘んで説明してくれる。
リベンジとして与えられた機会もモノにできなかった春歌は、自身の作曲さえも疑われているらしい。
「そんなことって…!」
「…それだけではない、落ち着け」
怒りに震える私を諌めた聖川は、続けて信じられない言葉を発した。
「お前も疑われている」
「…え?」
「七海、そしてお前の提出した曲はお前が睦月麗奈に頼んで作ってもらったものではないかと噂が立っている」
「なっ…?!」
何を、言っているのか分からなかった。
私と、春歌の曲が麗奈のものと疑われている?
そんなことって…。
「勿論信じていない奴の方が多いが…良くも悪くもお前達は目立っている、気をつけろよ」
そう言い残して去っていく彼に何も言えなかった。
自分が作曲家を真剣に目指しているということをあのテストで証明するつもりだった。
結果良い曲が作れたし、学年10位という成績も残せた。
なのに、こんな扱いあんまりだ。
私達が、悩んで頑張って作り上げた1曲を、盗作呼ばわりされるなんて。
悔しくてたまらなかった。
「…っ…」
一筋流れ落ちる涙。
噂が噂を呼んで、いわれのない汚名を着せられることもある。
それを無くすことなんてできない。
それが芸能界だと痛感しながら、流れた雫を拭った。