Let's play our music!【うた☆プリ】
第4章 それが芸能界
昼休み。
特にやることのない私は校内を散策していた。
この広すぎる校舎は早めに構造を理解しないといつか迷子になるためである。
華とくだらない話をしながら歩いていると、どこからか聞こえるサックスの音。
「あれ、この音…」
「華?」
別に楽器の音がしても何も不思議ではないだろうに、その音にピクリと反応した彼女は突然私の手を引いて走り出した。
驚いて名前を呼んでも彼女は黙っていて何も言わない。
ただひたすらに足を動かす華について行くと、そこにいたのは。
「…神宮寺、さん?」
「やっぱり!」
数人の女子生徒の前で、サックスを披露する神宮寺さん。
女子達は揃ってうっとりとした視線を彼に向けており、ベンチに座ってなかったら今頃地面に座り込んでいただろう。
それ程に、彼女らを腰抜きにする程に、彼の演奏は素敵だった。
「最っ高!流石レン!」
「ねぇレン、今度のお休みまた遊びに連れてってよ〜」
「私も、私も連れてってぇ!」
演奏が終わるやいなや彼に群がる女子達。
その人達全員に笑顔と投げキスを送る彼のファンサービスは正直凄いと思う。
「いいよ、レディ達がオレを魅了してくれるならね」
「きゃああっ!」
「素敵!」
もう既にアイドルじゃないか。
おそらく私が思ったことを華も思ったのだろう。
呆れたように告げた。
「…あの人ずっとここにいればいいんじゃない?」
「全くだよ」
強く、はっきり頷き同時にため息を吐くと、その様子に気付いた神宮寺さんが寄ってきた。
「どうしたんだい?2人して」
「レンくんはアイドルが天職だって話」
「ホストでも良いと思いますよ」
「…それは褒めてるのかな?」
やや微妙な顔をする彼。
しかしあることに気付くと困ったように笑う。
「?」
「レディ、忘れるの早いよ」
「あ、敬語か…ごめん」
どうも彼には敬語を使いたくなる何かがあるらしい。
庶民だからだろうか。
「次忘れたらお詫びを頂こうかな」
「お詫び…?」
「そう、楽しみにしてて」
唇に触れた彼の指から熱が広がる。
こうやって彼は女性を落としてるんだななんて頭は冷静だったけど、身体は全く動かなかった。
「レンくん!にちょっかいかけないでって!」
「はいはい、ごめんねレディ?」
華に叱られ、彼が離れたことでようやく体の自由がきく。
それでも作り笑いが限界だった。