Let's play our music!【うた☆プリ】
第26章 さぁ、奏でよう
「真斗」
「む…か」
トキヤと別れた後、真斗の姿を見つけた私は彼に近寄る。
私に気付いた彼はさりげなく立ち上がると、自分が座っていた椅子に私を促した。
こうしたさり気ない気遣いに、何度助けられただろうか。
私にかけられた疑惑。
華の苦しみ。
向いていること。
言いづらいだろう数々を、私のために言ってくれた。
いつだって近くにいて、見守ってくれていた。
聖川真斗という人に、ずっと、ずっと、頼っていた。
「結局、真斗にはお世話になりっぱなしだったね」
「…そうだったか?」
「そうだよ。覚えてないの?」
「助けようと思って行動した記憶はないからな。俺がやりたくてしているだけだ」
彼が持っているその優しさに、何度救われただろうか。
「ありがとう、本当に。真斗に会えて良かった」
「突然どうしたんだ」
「やっぱり感謝は言える時に言わないとね」
「…ふ、お前らしいな」
本当にありがとう、真斗。
あなたのおかげで気付いたことがたくさんあるよ。
これからは同じ事務所の仲間として、またたくさん助けられるのかな。
それなら、私もあなたを助けるよ。
恩返しっていう意味もあるけど、あなたが仲間として大好きだから。支えてくれたように、支えたいと思うから。
あなたが困っていたら絶対に手を差し伸べる。
私の言葉に笑った真斗は、では俺も1つ話をしようとこちらに向き直った。
その瞳が彼にしては珍しく悪戯っぽく輝いていたことに首を傾げる。弧を描いた口元も、普段の優しいものではなくどこか意地が悪そうなそれだ。
「神宮寺がな」
「レンが?」
なるほど、レン絡みのことだったのか。
互いに敵対視している彼らならば、相手の弱みについて話す時はああいった表情にもなるだろう。
納得のいった私を余所に、真斗は喉を鳴らして笑った。
「お前が退学してからというもの、大抵どこかぼんやりとしていてな。目に見えて落ち込んでるときもあってそれはもう珍しい姿だった」
「本当?」
「あぁ。時折お前の席を眺めてはため息をついていたと来栖も言っていたぞ」
彼奴はこんなこと知られたくないだろうがな。
そう言った真斗は、秘密にしておけよというように片目を閉じる。
彼の知らない1面をしれたことが嬉しくて、私も釣られたのか片目を瞑って了承した。