Let's play our music!【うた☆プリ】
第26章 さぁ、奏でよう
やがて華はそれじゃあねとどこかへ消える。
彼女が消えていった方向をぼんやりと見ていると、突然その視界が塞がれた。
「こんなところで何をしているんです、パーティーの主役が」
「トキヤ…別に私だけのパーティーじゃないし」
「ですが、主役の1人でしょう?こんなところで壁の花だなんて似合いませんよ」
お隣、構いませんか。
そう言った彼に頷くと、トキヤは静かに私の隣に並ぶ。
問い詰めたい事はたくさんあるだろうに、何も聞いてこない彼の優しさをひしひしと感じた。
「そういえば、HAYATOはどうするの?」
「やめました。事務所が変わりますし…私は、一ノ瀬トキヤとして歌う方が楽しいですから」
「…そっか」
彼の顔は晴れやかだった。
かつて彼と話していた時、頭上に広がっていた曇天ではなく、どこまでも澄み渡る、青い空のような。
「なら、やっと聞けるのかな」
「何をですか?」
「他の誰でもない、あなたの歌を」
望むことが出来ず、もがき苦しんで、出口を探し求めていたトキヤ。
私がいない間に、きっとST☆RISHのメンバーや春歌と一緒にその出口を見つけたのだろう。
こんなにも何か振り払って、明日への挑戦に心ときめかせる彼は初めて見る。
「もちろんですよ」
そして、こんなにも優しく、包み込むような笑みを浮かべる彼も。
「私も、やっと聞けますね。あなたの歌を」
「…そうだね、アイドルとして前を見据えた私の歌を聞いて、トキヤ」
かつて違う事務所で楽しくも本心から求めるものではないことをやって、本当にやりたいことに手を伸ばせなかった私とトキヤ。
やっと手を伸ばせたと思えば、掴んだつもりの手は空を切って。
それでも1人で掴んでみせようとした、似た者同士。
「これからは、」
「ええ、これからは…」
「「やりたいことを、やりたい人たちと」」
もう、1人で頑張る必要は無い。
一緒に飛んでくれる仲間がいる、転ばないように見てくれる仲間がいるのだから。