Let's play our music!【うた☆プリ】
第26章 さぁ、奏でよう
何も寂しく思うことなんてなかった。
私たちは成長して変わるけれど、根本は何も変わらないのだから。
「お母さんみたいって何だよ、俺そんなキャラじゃねぇぞ」
「ごめん…ふふっ」
「笑いすぎだっ!」
こうやって軽口叩きあって、笑い合う私たちはずっと変わらない。
どれだけ時が経とうとも。何を経験しようとも。
そうだよね、翔。
笑い返してくれたあなたが、答えだよね。
「翔ちゃーん!!」
その時、遠くから見慣れた青年がかけてくる。
「うわっ、那月!?どうしたんだよ」
「2人が見えたのでお話しに来たんですよ〜」
那月も変わっていない。ほんわかした雰囲気を身に纏い、会う人全員に癒しを与えることが出来そうな優しさを持つ人。
可愛いものが大好きな、私のピヨちゃん仲間。
「、お久しぶりです。会いたかったですよ」
「久しぶり、那月。私もまた会えて嬉しい」
「俺らが揃うのも久しぶりだな。あのライブの日以来じゃね?」
そう、あのHAYATOのライブの日。
砂月を探したり春歌と会ったり、たくさんのことがあった。
でも何より印象に残ってるのは、
「翔に着けて欲しかったなぁ、ピヨちゃん」
「なっ、何言ってんだよお前?!んなのやるわけねぇたろ!」
お揃いで買ったグッズを嬉々として翔に着けようとした那月に、逃げ回る翔。
その2人を近くで見ていたこと。
「そうですね〜また3人でお出かけしましょう」
「うん、そうだね」
「あっ…」
かつてを思い出し、感傷に浸る私に不意に那月が声をかけてくる。
何かと見てみると、彼はずっと手にぶら下げていた袋からなにやら出しているところだった。
「これ、あなたにあげようと思って」
そう言って彼が差し出してきたのは、様々な種類のピヨちゃんのグッズ。中には見覚えのないものもあるから、きっと新作も混ざっているのだろう。
「どうしたの、それ…」
「あなたにあげるために買っておいたんです。約束したでしょう?お揃いで出掛けるって」
学園を去る時、手紙でも謝った約束のことだ。
いつか2人でお揃いのピヨちゃんのグッズを着けて出掛けてみたいと。
似合わないからと可愛いものを避けていた私に那月が提案してくれた、特別なそれを守れなかったことが、本当に悔やまれてならなかった。