Let's play our music!【うた☆プリ】
第26章 さぁ、奏でよう
「なんだお前ら、楽しそうだな」
そこに、第3者の声が入る。
やって来たのは翔で、彼はかなりかっちりとした正装を身に纏っていた。
「翔!どうしたの?」
「音也、トキヤの奴が探してたぜ。それを言いに来たんだ」
「え、トキヤが?何だろ、ちょっと行ってくるね!」
「うん、いってらっしゃい」
翔の言葉でトキヤの元へ向かう音也を今度は翔と見送る。
思えば、彼とこうして2人になるのは久しぶりな気がする。
同じことを思っていたのだろう、翔はなんか落ち着かねぇなと照れたような笑みを浮かべた。
2人だけでいても、話題は溢れてきていたのに。それは今も変わらないのに。
沈黙なんてなかった私たちに、今静かな時間が流れている。
それが気まずいわけじゃない。むしろ、どこか心地いい。
でもやっぱり、どこか気はずかしいものはあるわけで。
「えーっと、元気だった?」
「んだよ、それ。そんなに話題ないか?」
「無いわけじゃないよ。むしろありすぎてどれから話せばいいか分からない」
「ははっ、そんじゃ俺と一緒だな」
当たり障りのない話題を振れば、彼は不満ありげな顔で眉を寄せる。でもその表情もすぐに崩れた。
その笑みがいつもの私が知っている翔で、少し安堵した。
久しぶり、といってもそんなに長い期間離れていたわけじゃないのに、彼はずいぶん変わったように見える。
初めてあった時は可愛らしさが残る少年のようだった。男気溢れてはいるものの、日向先生に憧れてはいるものの、それは少年がヒーローに憧れるようなものと同じに見えていた。
でも、今は違う。翔は1人の男になっていた。
前をまっすぐに見つめる瞳はかつてのものより鋭くて力強い。
格好良いと見惚れるけれど、どこか離れてしまった気もする。
「じゃあ俺からまず言わせてもらう」
「?何を?」
「お前への文句っ」
「うわ、いたっ!」
額に突如襲いかかった痛み。翔に重いデコピンを一撃食らわされて、思わず悶絶する。
「いきなりいなくなるんじゃねぇよ、心配するだろ。つか、した」
「翔…」
「次からはちゃんといつ帰るのかきちんと言うこと!わかったな」
翔は変わってしまった。
いや、そう思っていたのは私だけだったようだ。
彼は変わっていない。仲間思いなとこも、心配症なとこも。
「なにそれ…あはっ、お母さんみたい」