Let's play our music!【うた☆プリ】
第26章 さぁ、奏でよう
「何してんだ、こんなとこで」
「…蘭丸」
後ろからふわりと温もりに包まれる。
間違えるはずがない、忘れるはずがない愛しい温もり。
最愛の人に抱きしめられて微笑んだ麗奈は、その腕に手を重ねる。
「感傷に浸ってたの」
「らしくねぇ…のことか?」
「そう…あなたから見てどうだった?歌は」
「1年前と比べたら別人だった。あれは将来化けるな、思わず熱くなっちまったぜ」
「ふふっ…良かった。蘭丸のお墨付きなら安心ね」
「歌い終わった後も、泣くかと思ったがきちんと抑えて前座の役割果たしたしな。盛り上がりすぎて俺らのハードルが上がったことも確かだが」
作詞作曲のオリジナルソングを歌い終えた直後、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。
歌い終えた本人も呆気に取られていたが、それが示すものが何かを正しく理解した彼女は深く頭を下げた。
かくして、アイドルが再び生まれた。
やがて歓声が収まり始めたころ、彼女は今回のメインであるQUARTET NIGHTお披露目の司会を月宮林檎と共に見事に務め、前座としての役割を終えたのである。
「あれくらいじゃないと張合いがないんじゃないの?」
「バカ。俺らも未知の挑戦するのに、んな度胸はねぇよ」
クスクスと笑う麗奈は、やがて蘭丸にもたれかかるとポツリと呟く。
「ここからまた、始まるのね。新しい物語が」
「あぁ。俺もお前も、アイツも、次の挑戦が待ってる」
デビューが成功したからといって満足は出来ない。
まだ先へ、もっと上へ。
目指すべきゴールは、まだ見えてはいない。
「これからもまだまだ大変だろうけど、離さないでね」
「当たり前だ。お前だけは、絶対に離さねぇ」
それでも今傍らにあるこの温もりだけは失わないと誓う。
「愛してる、麗奈」
これから先、何があってもそばにいると。
月に見守られながら、共にいることを誓うかのように2人の影が重なった。