Let's play our music!【うた☆プリ】
第26章 さぁ、奏でよう
どことなく寒い夜の空。
満点の星を見上げながら、麗奈はグラスを呷った。
が仲間に呼ばれたことで別れ、1人で訪れたのはバルコニー。
髪をなびかせる優しい風に目を閉じて、麗奈は小さく言葉を反芻する。
「ありがとう、か…」
歳若い頃から才能を開花させ、業界を駆け上がった彼女だったが、後悔も不安も数多にあった。
その中でも彼女の中でしこりとなっていたのがという存在。
ほとんど自身の我が儘でこの世界に引きずり込んでしまった幼い少女のこと。
彼女の才能は誰より理解しているつもりだ。
何に秀で、何を尊び、何に心動かされるのか。
長い付き合いの中で互いに知り尽くしてきた。
それでも、この選択が正しかったのか不安に思う。
作曲家を初めから目指させてやれば良かったのではないか。
その方が、の幸せだったのではないか、と。
しかし彼女はそんな自分の心を知っているかのように語った。
“ありがとう、私をパートナーに選んでくれて”
すっきりとした笑顔で、こともなげに。
その言葉に、どれほど救われただろう。
「ありがとうなんて…私のセリフよ」
彼女がいたから、今自分はここにいる。
あの清らかな娘に出会えたからこそ、曲を作ろうと思える。
蘭丸同様、に出会っていなければ自分の人生は今ここにはない。
ありがとう、私に出会ってくれて。
ありがとう、歌ってくれて。
グラスに残っていたワインを、一息に飲み干した。
こみ上げてくる熱いものを、押し戻すかのように。