Let's play our music!【うた☆プリ】
第26章 さぁ、奏でよう
『かんぱーい!!!』
小気味よく響くグラスの音と、元気いっぱいな皆の声。
各々が皆とグラスを合わせて笑い合うこの光景は、とても幸せなものに見えた。
「」
「麗奈、お疲れ様」
麗奈とグラスを合わせて、そのまま口を付ける。
喉に流れてくる炭酸の刺激が心地よくて、満足そうな顔をしていただろう私を彼女が笑った。
「どうしたの?」
「いいえ。やっと、ここまで来たのね」
「…そうだね、やっとこの場に来れた」
誰より長い付き合いの彼女の言葉にはたくさんの意味があった。
それを引き金に、様々な記憶が蘇る。
麗奈に憧れて、作曲家を目指した。
ほんの少しだけ、アイドルをやって。
進む道が見えなくなって、早乙女学園を受験。
そこで、皆に出会った。
失いかけていた自分を思い出して、目をそらしていた想いと向き合って。
自分の目指す道を、今、真正面から見据えてる。
「色々…本当に色々あったけど、全部今ではいい思い出だよ」
「そう。なら良かった」
たくさん笑って、たくさん泣いて。
そのすべてが今の自分を作り出した。
無駄だと思える事は何一つなくて、晴れやかな顔でいられる。
でも、対照的に麗奈はどこか沈んで見えた。
「どうしたの?」
何かを考え込んでいた彼女は、やがて口を開く。
「ねぇ、。この世界に足を踏み入れたこと…本当に後悔していない?」
その瞳は不安に揺れていて、いつもの彼女らしくない。
麗奈は判断がつかないでいるのだ。
私をこの世界に引き入れたことを。
始まりは確かに彼女の我が儘からだった。
私の夢を知っておきながらアイドルとしての道を開かせたのだから。
でも、その理由が今なら分かるから。
"この人を自分の歌で輝かせたい"
その欲求は説明できやしない。
作曲家の本能であり、作曲意欲を高める原動力は、何も知らない人に理解しろという方が酷というもの。
そんな渇望を、今なら理解できるから。
「麗奈、ありがとう……私を、パートナーに選んでくれて」
選ばれる幸せを、感じることが出来るから。
心からの感謝と共に、私は笑った。