Let's play our music!【うた☆プリ】
第25章 信じること
彼に、レンの元に駆け寄ると彼は他からは分からないように額に小さなキスをくれた。
「来てくれてありがとう」
「そりゃあお呼ばれしたからね。ここには来てないけど、イッキたちも客席に来てるよ」
「本当?!忙しいのに、ありがとう」
ST☆RISHとしてのデビューを果たした彼らは今頃事務所との契約やら何やらで大変だろうに。皆来てくれたのだという事実につい喜んでしまう。
そんな私を笑って見ていたレンは私の手を握ると、その甲に唇を寄せる。
「ちょ、レン…!」
「大丈夫だよ、このくらい。睦月さんが誰も来ないようにはしてくれてるから」
「麗奈が?…というかいつの間に結託してたの」
「嫌だなぁ、協力をお願いしただけだよ」
何が違うというのか。
だが彼が悪びれもせず言い切ってしまうのだから、まあそれでもいいかなんて思ってしまう。
罪な人だ。毎日会う度に、こうして言葉を交わす度に、あなたの新しい一面を知っていく。
それだけあなたの深みにはまっていく。
抜け出せなくなりそうだ。
もっとも、抜け出す気もないのだが。
「前にもあったよね。俺が本番前の君を激励しに来たこと」
「華のパーティーのこと?」
「そう。すごく緊張してて震えてた君は珍しくて、可愛かったよ」
「やめてよ。慣れないことだったから緊張するのも当たり前でしょ?」
人前で発表することの恐怖から逃げ出したくなっていた私に、彼は立ち向かう勇気をくれた。
背を向けていた私をそっと振り向かせて、背中を押してくれた。
あの言葉を、今でも覚えてる。
「ねぇ、レン。あの時言ってくれたこと…今でもそう思ってる?」
明確にしなかった言葉だけれど、彼はすぐ分かったようだ。
何をバカなことを、とでも言いたげに笑う。
「当たり前じゃないか。俺は君の味方だし、誰より先に拍手を送る準備は出来ているよ」
その自信たっぷりな言い方が、私を十二分に安心させてくれる。
微笑みが、声が、仕草が、力をくれる。
私を信じてくれるから。
だから私はまたステージに歩いていける。
「、時間よ」
麗奈の声に振り向き、再びステージに目を向ける。
静かに、1歩ずつ足を踏み出した私の背に、レンの声が届いた。
「、真ん中は君の場所だよ」