Let's play our music!【うた☆プリ】
第25章 信じること
「………あー、緊張してきた」
「今さら何よ」
「だって久しぶりのステージなんだもん。心臓がうるさい…」
そして、本番の日を迎えた。
QUARTET NIGHTの前座を務めるということで皆さんより先に舞台袖に来ていた私は緊張からたった鳥肌をゆっくりとさする。
それを他人事のように…実際他人事なのだが見ていた麗奈はそっと私に水を差し出してくれた。
「ありがと」
「昔から飲んでると緊張ほぐれるのよね、あなたは」
「あはっ、そうだったね。いつも麗奈がくれた水を一気飲みして怒られたっけ」
「結局新しい水を買いに行ったこともあったわね」
懐かしい話題を持ち出したのは、きっと彼女なりの気遣いだったのだろう。今回のステージは今までよりもずっと重たいものだということは私も彼女も承知している。
その上で私を少しでもリラックスさせようとしてくれているのだと。
「…ありがとう」
「私は何もしてないわよ、道を切り拓くのはあなた自身。それに…」
たくさんの意味を込めた“ありがとう”を、彼女はちゃんと受け取ってくれた。
何か続けながらある1点を見ていたが、やがてその顔が少し綻ぶ。
そして私をその方角へと押し出して告げた。
「あなたに力を与えるのは、彼の役目だわ」
方向の先にいたのは、大切で大好きな人。
彼も私を見つけると手を上げて片目を閉じてくれた。約束を守りにきたと告げるように。