Let's play our music!【うた☆プリ】
第23章 彼らの名は
ライブ会場は新人のデビューにしてはかなり大きかった。
それなのにどうやら席は満員らしい。
既に立ち見も用意されているらしく、ずいぶん期待されていることが見て取れた。
開演も近いからか少しずつ熱が高まりつつある客席。
QUARTET NIGHTの皆さんの席の隣に麗奈と座り、その様子をうかがう。
興奮に、期待が渦巻くこの空間にいると、知らず知らずのうちに鼓動が早まってくる。
その場で感じる空気独特の緊張感に体を震わせた。
横にいる皆さんは流石慣れているのか落ち着いた様子。
各々余裕ありげな表情でステージ上を見つめていた。
「呑まれないんですね、雰囲気に」
「当然であろう。この程度でやられていてはステージで何も出来ん」
「まぁ、一応プロだしね」
カミュさんも美風さんも堂々たる振る舞いだ。
きっとこれ以上の熱気にいつも包まれているのだろうと思わせる貫禄。
平伏せざるを得ない。
「ちゃんはちょっと緊張してる?」
「はい。つられちゃって…」
「最初は皆そんなもんだ。その緊張を力に変えられるようにしろよ」
持ち歌1つの私はライブ経験があまりない。
歌番組での歌唱がほとんどで、ここまで大勢のお客さんの前で歌ったことが数えるほどしかなかった。
それもどうやら緊張の理由になるらしい。
黒崎さんの言葉に頷くと、遠くから私を呼ぶ声がした。
「やっぱり、?!」
その主は、忘れられない学園生活で得た大切な友人の1人。
「っ…友ちゃん!!」
渋谷友千香だった。