Let's play our music!【うた☆プリ】
第23章 彼らの名は
同じようなことを、遠い日にも思ったことがある。
レイジング事務所でお世話になった人たちだ。
でも、あの時はアイドルとしてじゃない姿でお礼を言いたかった。
今は、違う。
音楽に向かう姿勢を見て、その歌声に宿る信念を知って。
私はこの人たちに並びたいと思った。
QUARTET NIGHTは確かに同じ歌を奏でるグループだけど、曲の中でその歌声はぶつかり合う。
共に歌う仲間でありライバルのチームメイトに対し、己の歌で立ち向かっている。
そんな姿に憧れた。
こういった絆を紡ぎたいと思った、この人たちと。
そして、今もなお夢を追い続けているだろう“彼ら”と。
だから、今日も歌う。
たくさんの人たちへの感謝と、そして自分の信念を込めて。
「おはようございます」
「おっはよー、ちゃん」
輝くステージに立つその日のために。
私の中で、社長に求められていた答えはすでに固まりつつあった。
***
「ライブに?」
「そう。あるアイドルグループのデビューライブ。行かない?」
麗奈がそんな提案をしてきたのはそんなある日。
早乙女社長に答えを告げる、即ち私の歌を聞いてもらう日を数日後に控えた大事な時期だった。
「でも、もうすぐ…」
「そうね、大事な日の近くに誘うのもどうかとは思うんだけど…きっとあなたに刺激になると思うの。ダメ?」
「ぼくちんもさんせーい!」
「寿さん…」
「ちゃん最近頑張ってるし、たまには息抜きした方が良いと思うよ。それに、多分このライブは他とは違うから」
そう言って意味ありげにウインクしてくる寿さんはやけに自信ありげだった。
彼がここまで言うなんて、どんな人なのだろう。
まだ見ぬアイドルに多少興味が湧く。
寿さんがこう言うならば、と結局私はその誘いに乗ることにした。
「ソロ?グループ?」
「グループよ、6人の」
「へぇ…」
支度をしてくると部屋を出た私の姿を、麗奈はどこかおかしそうに見つめていたが、それに何の意味があるのか私には分からなかった。