Let's play our music!【うた☆プリ】
第22章 気付けなかったもの
テレビの中の映像にクギ付けになっている私の横で、美風さんは静かに口を開く。
「何が凄いと思う?このライブ」
「それは勿論、歌やパフォーマンスです。ここまで完成されてるなんて…」
「そうだね、確かにHAYATOの力量は凄い。このまま行っていればもっと大きな会場でのライブも夢じゃなかっただろうね」
でもそこじゃないという彼の言葉に私は首を傾げた。
ライブという極端に言えば見世物をやるに当たり、何が重視されるかといえばこちら側のパフォーマンスだ。
そのクオリティによってはスタートラインに立つことすら出来ない。
なのに、このライブにはそれ以上に凄いものがあるという。
「さっき君も熱くなっていたでしょ、あれはどうして?」
「えっと…ライブの空気が凄くて、思わず乗ってしまいそうな雰囲気だったからです」
「そう、ライブにはあの場でしか生まれない興奮がある。感動がある。それがアイドルに力を与える…でも、それにはなくてはならないものがある」
「なくては、ならないもの…」
「さっき君も言っていたことだよ…ファンだ」
ファン。
彼がすんなりと言ってのけたその存在は、今も画面の中で歓声を上げ、舞台上のたった1人に声援を送り続けている。
そして、それに応えるかのようにHAYATOが声量を上げ、華麗に片目をつむって見せた。
更に歓声が大きくなる。
終わらない相乗効果。それがもたらすあまりにも大きな力を、美風さんに言われて意識するまで私は考えたこともなかった。
「ボク達は確かに日々トレーニングを重ねている。それは完璧なライブをするため、自分たちを高めるため。でも…何よりも、待ってくれているファンのためだ」
「待ってくれている、ファン…」
「そのステージの向こうで皆が笑ってくれるから、楽しそうにしてくれるからアイドルもまた普段以上の力が出せる。もっと喜んでほしくて、それに応えたくて」
当たり前のようで、掛け替えのない存在。
「だからボクらは、ステージでさらに進化する」
アイドルたちの、力の源のことを。