Let's play our music!【うた☆プリ】
第3章 再会と初授業
自分の存在なんてちっぽけだと思っていた。
でも、そう思っていたのは私だけだったらしい。
元アイドル、。
睦月麗奈とコンビを組み、1枚だけ出したCDで芸能界を駆け上がった驚異の新人。
今後の活躍が期待されていた中、わずかデビュー2年で活動休止を発表。
「そして早乙女学園に作曲家志望として入学…か」
問題は作曲家志望であるということなのだろう。
アイドル志望から見れば裏切り者、作曲家志望から見れば作曲家を軽んじた人間と見られてもおかしくはない。
月宮先生に言われて初めて気付いた。
私は見られている。
好奇と、嫌悪の目で。
「どうしたものか…」
このままでは組むペアがいない。
何とかして自分の評価を塗り替えないといけない。
そんなことを思いながら食堂で座って華を待っていると。
「…春歌?」
1人黙々と勉強を続ける春歌の姿を見つけた。
彼女のそばに近づいても全く気付かず、その集中具合が伺える。
「わっ…ちゃん?」
「何してるの?」
「えっと…作曲の勉強を…」
見ると彼女の机には大量の本と書き込みのされているノートが。
聞くと作曲や楽譜について勉強しているとのこと。
全クラス共通のレコーディングテストに向けてだろう。
「頑張ってるね、春歌」
「…でも、なかなか難しくて」
成る程春歌はそれに悩んでいるようだ。
どうやって作曲するのか分からないと頭を抱える彼女は、ふと思い出したように顔を上げると、突然私に向き直る。
「ちゃんも作曲家志望だよね?…作曲って、どうやってやるの?」
「…えっと…そうだね」
私も本格的な作曲をしたことはないのだが…。
今の彼女は藁にもすがりたい気分なのだろう、真剣な目でこちらを見ている。
「私はその時ふと浮かんだメロディーを膨らませて作るよ」
「その時…浮かんだ…?」
「参考にならなくてごめんね、でも春歌なら大丈夫だよ」
「え…?」
「春歌は、歌う人のことを思えばきっと、すぐにメロディーが浮かんでくるから」
未だにポカンとしている彼女に軽く手を振り、席に戻る。
あの作曲方法は麗奈と同じやり方だ。
まだ確信はないけれど、春歌はきっと麗奈と同じタイプの作曲家だと思うから言ってみたのだが。
果たして彼女の役に立てただろうか。