Let's play our music!【うた☆プリ】
第19章 転機
震える手でペンを手に取る。
目の前に置かれたままの退学届を見据えて、そっとペン先を近づけるものの、その先にはなかなか進めない。
「……」
もし学園をやめたら。
頭をよぎるのは、短い間とはいえ共に学んできた仲間たち。
彼らには2度と会えないだろう。
それは寂しいし、辛い。
特に…神宮寺さんと。
「…」
その時、ある記憶が蘇った。
『大切なルールがある、これを守らなければ退学だ。それは…』
恋愛絶対禁止令。
なんだ、そうか。
私は既にここにいる資格なんて持ってなかったんだ。
いつの間にか手の震えは収まっていた。
さっきまでの躊躇が嘘のようにペンが動き、白い紙に自分の名が記される。
「…今まで、ありがとうございました」
「やけに突然納得したようだが、何かあったか?」
「いえ…自分には既にここにいる資格がないことを思い出しただけです」
「そうか…」
不思議と涙は流れなかった。
穏やかに、ゆるやかに、胸を悲しみが満たしていく。
さよなら、皆。
さようなら…レン。
あなたに恋したことに後悔はないけれど、禁止令を破った以上私はここにいられない。
そうやって、自分を納得させることにした。
深々と学園長に頭を下げ、部屋を出ようとする。
「まだyouには話がありマース!!」
「へ?」
それを止めたのは、口調が戻った学園長。
「あなたの夢はまだ終わってないわよ、」
そしてまさに私が出ようとした扉を開けて部屋に入ってきた麗奈だった。