Let's play our music!【うた☆プリ】
第18章 ペア
「っっ?!」
目の前には聖川さんの顔があった。
焦った表情を浮かべた彼の手にあったタオルで額を拭われ、ようやくさっきまで見ていたものが夢だったと理解する。
「大丈夫か、酷くうなされていたぞ」
「…聖川さん、どうして」
「一ノ瀬と伊集院に頼まれた。2人とも予定があるから看ていてくれと」
何があったか、覚えているか。
聖川さんの言葉に、ゆっくりと頷いた。
私は、あの時橋から落ちたんだ。
「落ちたお前を助けたのは一ノ瀬だ。それを見た俺と伊集院がお前を部屋に運んだ」
その後念には念をと医者を呼んだところ、熱があったらしい。
「無理をしていたな、この合宿中」
「…返す言葉もございません」
昨日夜更かしをして課題を仕上げたことを伝えると、当然のことながら眉をひそめられる。
「…何があったか、聞いてもいいか?」
「…聖川さん…」
上体を起こして彼をまっすぐに見つめると、聖川さんもベッドに腰掛けて私を見返す。
この人になら、告げられるだろうか。
今までもこの人にはお世話になっていた。
悩みを聞いてくれて、たくさんのことを教えてくれた。
神宮寺さんに抱くこの想いとも、トキヤや翔へのこの思いとも違う。
絶対の信頼を、私はこの人に置いていた。
言いづらいだろう現実を、はっきりと教えてくれたこの人に。
「…何て事はないの、振られちゃっただけ」
「振られた?」
「神宮寺さんが…春歌に申し込んでるのを聞いちゃって、気が動転しちゃって」
「七海に…」
「バカだよね。私、どこかで期待してたの…神宮寺さんが、私を選んでくれるって」
話すことで脳は理解を深めるという。
今もまさにそれで、認め切れなった事実が私の心にストンと落ちて、再び目頭が熱くなった。
「…そうか」
そっと差し出されたハンカチで目尻を拭く。
何も言わずにそばで見ていてくれた聖川さんは、やはりあいつもかと特に驚くことなく受け入れた。
「…予想していたの?」
「あいつの七海への執着は普段と違っていたからな。何となく察しはついていた」
「そう…はは、知らなかったのは私だけか」
つくづく自分の脳内が花畑だったと自覚する。
彼が今まで春歌とどんなふうに接していたなんて、どこを探しても記憶になかったから。