Let's play our music!【うた☆プリ】
第18章 ペア
「この俺、神宮寺レンに曲を作るのは…七海春歌。君さ」
頭を、何かで思い切り叩かれたような、そんな感覚。
その後もきっと2人は何かしらの言葉を交わしたのだろうけど、それらは全く耳に入ってこなかった。
龍也先生の言葉は正しかった。
彼は、私じゃなくて春歌を選んだ。
私じゃなくて…。
「……っ!!」
頬を熱い何かが伝う。
止まらずに流れるそれを拭うこともせず、私はそこから気付かれないように離れた。
そうするしか、出来なかった。
彼の申し出に対する春歌の返事なんて聞きたくなかったし、たとえ彼が断られたとしてもそれに漬け込んで申し込むなんて惨めな真似したくなかった。
悔しくて、切なくて。
報われなかったこの感情をどうすればいいか分からなくて。
ゆっくりとした歩きはやがて駆け足となり、やがて全力となる。
恋してるからだけじゃない。
私は1人の作曲家として彼の歌が好きだったし、自分の力で彼を輝かせてみたいと思った。
そう思えた、初めての人だったのだ。
「っ、う…ぁぁ!!」
掠れた呻き声がこぼれる。
声を出して叫ぶことも出来ない私の、精一杯の叫び。
"は…もしかしたら、誰とも組めないかもしれねぇ"
龍也先生のさっきの言葉が、現実味を帯びて私に襲いかかった。