Let's play our music!【うた☆プリ】
第18章 ペア
今、何て言った…?
龍也先生の言ったことがよく飲み込めない。
いや、きっと頭では分かっていることを、心が認めるのを拒否しているのだ。
思考が停止して、石のように動けなくなった私に更に彼の言葉は続く。
「おそらくは七海だ」
追い討ちをかけるように。
ちょっと待って。
そんなに一気に言われても追いつけない。分からない。
神宮寺さんがペアに選ぶのは私ではなくて春歌。
そんな予想、信じられるわけがない。
「…それに、あんまり考えたくねぇが…」
「…何?」
「は…もしかしたら、 」
「……!?」
全身から力が抜ける。
腕に抱えていた課題が音を立てて散らばった。
「っ…誰だ!!」
龍也先生の声で我に返り、反射的に走り出してその場を離れる。
課題を拾うのも忘れて。
龍也先生の言葉が、頭をぐるぐると回る。
呪いのように、心を締め付けながら。
先生方のコテージから離れて誰か生徒の部屋の壁にもたれて息を整えた。
呼吸は通常に戻りつつも、心臓の音だけは戻らない。
むしろ鼓動がやけに鮮明になってきて、頭を抱えた。
嘘。
嘘だ、嘘に決まっている。
あんな予想、間違ってる。
神宮寺さんが春歌を選ぶなんて、まさか。
「嘘だ…」
安心させるために声に出した声は、不安になる程弱々しい。
それが嘘だと、言い切れない私もそこにはいた。
「やぁ、おはよ。子羊ちゃん」
「…?」
背を預けた壁の少し遠くから聞こえた声。
それは今1番聞きたくて、聞きたくなかった声。
私がもたれた部屋は、幸か不幸か春歌と友ちゃんの部屋だった。
気付かれないようにこっそりと自分がいない方の様子を伺うと、そこにいたのは案の定。
春歌と、神宮寺さんだ。
橋の上に立って首を傾げている春歌と、そんな彼女に近づく彼。
「この俺、神宮寺レンに曲を作るのは…」
いつもなら頬が熱くなりそうに甘く聞こえる彼の声なのに。
思わず笑顔になってしまいそうな程に優しい彼女を見ているのに。
私は笑顔でも、真っ赤でもない。
目を見開いて、真っ青だろう。
やめて。
言わないで。
「七海春歌、君さ」