Let's play our music!【うた☆プリ】
第17章 始まる夏季合宿
神宮寺さんが帰った後、私はトキヤとの約束のために海辺に来ていた。
日はもうすぐ沈みそうで、地平線の彼方に見える夕日が私たちを照らす。
温かな光に見守られながら、私は今までの課題についてトキヤに伝えていた。
「…こんな感じかな、分かった?」
「ええ、ありがとうございます。とても分かりやすい説明でした」
トキヤがいなくなったのはそれほど遠い昔じゃない。
その後に出た課題は多くはなく、教えるのは困難ではなかった。
トキヤは飲み込みが早いし、私自身の良い復習にもなったこの時間はとても有意義で、また過ぎていくのも早い。
「1日の終わりって早いなぁ」
「そうですね。合宿1日目がもう終わりだなんて、少し信じられません」
「トキヤも?…やっぱり皆同じなんだねー」
話すべき点は伝えたし、必要な紙も渡したので彼への用事は済んだものの、そのまま帰るのも味気なくて2人浜辺に腰掛ける。
彼も同じ思いだったらしく、2人同時に動いたときは少し笑ってしまった。
「…は、もうペアを決めましたか」
「ううん、まだ。トキヤは?」
「私もまだです。…その、自分のことで精一杯で」
「そっか…でも焦らなくていいでしょ」
「ええ」
同じくアイドルとしての活動経験があるからか、トキヤに対しては友というより仕事仲間、同僚に近い感情を持つことの方が多い。
関係ないことで笑い合うより、仕事や音楽の話をして真面目な顔をしている方が楽しいと思えてしまうような。
トキヤ自身もそう感じているのか、彼とよく話すようになってから話題は専ら今の歌手や曲風についての論議だった。
「ね、トキヤ」
「はい?」
「アイドルって…楽しいよね」
「…まだ、心は決まりませんか」
「あはは、わかっちゃう?」
「これだけ話せば、なんとなく」
そしてその密な時間の中で、互いのことを随分と知ってきた。
あっさりと私の迷いを見破られてしまうくらいに。
早乙女学園を教えてくれたトキヤ。
彼のみが知っている、私の志望動機。
その答えは未だに見えていない。
「…そういえば、あなたに1つ言っていなかったことがあります」