Let's play our music!【うた☆プリ】
第17章 始まる夏季合宿
「神宮寺さんは申し込んだの?…確か、ほぼ絞れてるって言ってたよね」
さりげなく話題を私から彼へと移す。
自身への追求が嫌だったのもあるし、彼の近況が知りたかったのもある、そんな私の思惑は彼にバレているだろうか。
「いや、まだだよ。タイミングが掴めなくてね…俺自身も緊張してるし」
「緊張?」
「そ。断られたらどうしようとか考えちゃうから」
女性を誘う言葉は言い慣れているだろう神宮寺さんが、緊張してなかなか誘えないなんて。
そんな事実に素直に驚いた。
甘い言葉を囁くように軽く言ってしまうと思っていたから。
そして、少し可愛いと思ってしまった。
「…ふふっ」
溢れた笑いに彼は首をかしげる。
何でもないとごまかして、窓から外を見上げた。
青い空には雲ひとつない。
「レディは?もう決めたのかい?」
「決めたけど…神宮寺さんと一緒だよ、怖くて申し込めてない」
目の前にいるのにね。
心の中で自嘲する。
時折、ふと思うのだ。自分はこんなに臆病な人間だったかと。
断られるのが怖くて言い出せないなんて記憶はない。
昔の私は麗奈を真似していたこともあってか、物怖じせずに何でも口に出していた。
そんな私が、このザマだ。
恋というのはつくづく恐ろしい。
「…じゃあ、こうしよう」
「?」
「明日、俺も君も意中の相手にペアを申し込むんだ。お互いがお互いの背を押してるって思えば勇気が出るんじゃない?」
「…そうだね。そうしようか」
いつまでも逃げてはいられない。
それなら、早いうちに決着をつけてしまわなければ。
神宮寺さんと交わした指切りは、確かに私に勇気をくれそうな温かさを持っていた。
明日、あなたに申し込むよ。
私と卒業オーディションを受けてくれと。