Let's play our music!【うた☆プリ】
第17章 始まる夏季合宿
「私の曲…"七色のコンパス"なのですが」
七色のコンパス。
確か、春歌を勇気付け、この世界に引き込んだ曲。
彼女に聞かせてもらったが、優しく包み込まれるような曲だった。
彼がそばで、抱きしめていてくれてるかのような。
「睦月さんがアレンジに関わっているんです」
「……え?」
告げられた事実に動きが止まる。
そんな話は彼女からも聞いたことがなかった。
あの歌に、麗奈が関わっている。
それは思いの外私に衝撃を与えた。
「その際に睦月さんともお話しをさせていただきました。…その時に、あなたのお話になったんです」
「私の?」
「はい。とても純粋で素直な歌を歌う人がいると」
"あなたの歌を聞いていると、あの子を思い出すわ"
"私の歌で、ですか?"
"別に歌い方が似ているとかじゃないの。2人とも伸びやかに声を出していて、音楽を楽しんでいる…ただ、それだけ"
"……"
"変なこと言ってごめんなさい。ただ、久々にあの子の歌も聴きたくなっただけよ"
"…会ってみたいです、その方に"
"ふふっ…そうね。あなたとあの子は相性が良いと思うわ、音楽の面でね"
「そんなことが…」
「あの人とお話ししたのはあれ1度きりでしたが…その後あなたがデビューして分かりました、あの時言っていたのがあなただと」
「……」
「こんなこと私が言うのもおかしいですが…」
「何?」
「あなたが道を決められず迷っているのなら…彼女の言葉を信じてみるのも良いと思います。睦月さんはおそらくあなたの強みも課題も良く知っている方ですから」
麗奈の言葉。
それは、アイドルという道を選べということ。
「……ありがと、もう少し考えてみる」
それでも、これがトキヤなりの心配だと分かるから。
彼もきっと私に向いているものが何かに気付いているから。
ごめんね、トキヤ。
それでも決めかねているのは、私のプライドに過ぎないんだ。
「……課題?」
「どうかしましたか?」
「…明日の朝までの課題、終わってない…!!!やばっっ」
「あっ…もう見えなくなりましたか。忙しい人ですね」