Let's play our music!【うた☆プリ】
第17章 始まる夏季合宿
時が止まったかのようだ。
ドアを開けて目を丸くさせる神宮寺さん。
姿を隠す間も無く、今の格好を完璧に見られて呆然とする私。
「な、何で…」
「…華に呼ばれてね、用があるから来いって」
何だかこれもデジャヴだ。
しかしあの時とは全く違うことが1つある。
それは、神宮寺さんの来訪が意図的なものであるということだ。
「…どういうこと?華」
ハメられた。
問い詰めようとして彼女がさっきまで立っていたところに振り向くと、なぜかそこには誰もおらず。
「じゃ、ごゆっくり〜」
そんな声と共にドアが閉まる音がした。
いつの間に入り口に移動したのだろう、最早忍者の類の動きをした華が外に出たのだ。
つまり、この部屋には私と神宮寺さんしかいないわけで。
「…そりゃあ外には出たくないって言ったけどさ…」
だからといって彼の方を呼んでくるのか。
あまりにも積極的な彼女の行動はらしいといえばらしいのだが、今はなんとも辛い。
「は何でその格好を?」
「なんか、華がね…勝負服だって」
「勝負服?ははっ、あの子らしい発想だねぇ」
せっかく来てくれたからとイスを勧める。
良いのかと視線で聞いてきた彼に頷くと、彼は安心したように腰掛けた。
制服姿ではない彼を見るのはあの買い物の時以来だからそんなに間が空いてるわけではない。
しかし、南の島ということで少し解放的な気分になっているのか彼の服装は普段よりラフな感じがした。
「勝負服ってことは、それを着て誰かにペアを申し込むのかい?」
「…そういうことになるのかな。まだこれを着るか決まってないけど」
「着たらいいのに。似合うと思うよ、俺は」
彼から自然に溢れ出る甘い言葉。
それが私に対して向けられた、本心からの言葉であるなら良かったのに。
そうしたら今すぐにでも申し込むのに。
こういうとき、確信を持ってから申し込もうとする私は意気地なしと言われても仕方がない。