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Let's play our music!【うた☆プリ】

第16章 膨らむ期待



「……ん?」

おかしいな、私の耳はついにおかしくなったのだろうか。
まさか彼のことを考えるだけで声さえ聞こえるようになるなんて好きすぎだろう。


「いや、そんなまさか…」

「?」

「ひゃあっ?!」


幻聴じゃなくて現実だった。
私の背後から肩を軽く叩いたのは神宮寺さんで、聞けばどうやら少し前から声をかけていたらしい。


「ご、ごめん気付かなくて…」

「いや、良いんだ。それより2人は?」

「…まぁ、色々あって」


神宮寺さんのそばに華や友ちゃんの姿はない。
首をかしげる私の様子に気付いた彼は今ちょっと別行動してるんだと教えてくれた。


「何でも女子だけのお楽しみらしくてね」


肩をすくめる彼は君も1人なら一緒にどう、と手を差し伸べてくる。
その誘いを断る理由は今の私にはない。

音也と四ノ宮さんを見つけるのを手伝うというのを条件に、私は彼の手を握った。



この間に、"レン"と呼べたら良いなと密かに思っていたのは内緒。















「神宮寺さん達は何買った?」

「基本的には日用品かな、あの2人は服とかも買っていたけど」


やはり旅行は特別なイベント。
新しい服でオシャレに決めたいと思うのは女心だ。

私にもそんな気持ちがないわけじゃないけれど、それは通販で頼むつもりでいた。
決めるのに時間がかかるから、待たせるのが申し訳ないのだ。


「レディは服を買ったのかい?」

「ううん、私は良いの」

「へぇ…」


視線を彷徨わせていた神宮寺さんは、何かに目を止めると急に私の手を掴む。


「へ?」

「あそこに行こう」

「あそこ…?」


彼がまっすぐ見ていた場所は洋服屋。
それも高そうな。


「無理無理!買えるものないって!」

「見るだけだよ、ね?」

「うぅ…」

「せっかくの機会だからさ。俺に君を飾らせてくれないかい?」


私に笑顔を向けて言った頼みを断れるわけがなかった。
小さく頷いたことを確認した彼は、ずんずんと店へと歩いていく。

その顔がやけに楽しそうだったから、困っていたはずの私も少し笑った。
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