Let's play our music!【うた☆プリ】
第16章 膨らむ期待
「あーもう!!」
再び私は走り回っていた。
理由は簡単、砂月を探すためである。
ちょっと良いシーンになったその雰囲気に流されて彼がどこかに行くのを見過ごすなんてとんだまぬけだ。
眼鏡を見つけた音也が偶然会ってたりしたら彼だけで対処できるか怪しい。
だからこそ私はそばを離れちゃいけなかったのに。
「仲良くなれたと思って油断したかな…」
トキヤ、音也、そして砂月。
今まで友達とも何ともいえない関係だった3人。
それでも、彼らが私を友だと呼んでくれたあの日から私たちの関係は確かに変わったはず。
ならそれを明確にしたかった。
それがここ数日挑戦している"皆を名前で呼ぶこと"なのだが。
今のところ皆それを受け入れてくれてるが、まだ終わりじゃない。
例えば聖川さん。
聖川さんなんて、いろんなことにお世話になっているのにまともに礼もいえていないし名前も呼べていない。
そして、神宮寺さん。
この人に関しては名前で呼ぶことは拒否されないと思う。
ただ、問題はそこじゃない。
「…レン、なんて呼べないよ…」
そう、ただ照れる。恥ずかしい。
自分でもとんだ乙女だと思うが、これがなかなかな障害なのだ。
今日朝会った時とか、呼んでみようとチャレンジした。
『やぁ、おはよ、レディ』
『お、おはよう!…レ…』
『……?』
『…レ、レディは照れるからやめてよ…』
『お前今更何言ってんだ』
でも無理だった。
よく分からない誤魔化し方をして、翔に突っ込まれて終わった。
あの色気たっぷりの視線で見つめられると途端に口が私の管理下を離れる。
「あれ、レディじゃないか。どうしたんだい」
この甘いとろけるような低めの声を聞くと途端に身体が硬くなる。
好きだから。