Let's play our music!【うた☆プリ】
第16章 膨らむ期待
四ノ宮さんは長身だから目立つ。
先ほどと変わらぬ場所で仏頂面で立っている彼はいつ爆発してもおかしくない程の苛立ちを抑えているようだった。
触るな危険、そんな感じが満載。
しかし触れなければならないと己を奮い立たすと、ゆっくり歩いて近づいて行く。
「…砂月さん」
「あぁ?……ちっ、お前か」
私のことは覚えていてくれたらしい。
ひとまず、会話はできるということに安堵した。
苛立っていることに変わりはないから怖いことは怖いのだが。
「久しぶり…とりあえず付き合って!」
「はぁ?!おい、てめっ…引っ張んじゃねぇ!!」
小さな、しかし確かな一歩を確実に踏み出して距離を詰める。
普通に話し合って落ち着かせようなんて考えは元々私の頭の中にはなかった。
ある程度の近さにまできた瞬間、彼の腕を掴んで走り出す。
後ろから反発の叫びが聞こえたが、無視して行かせていただいた。
「…はぁ、ここで良いや」
2人できたのはショッピングモールのそばにある大きめの公園。
場所をこっそり音也に連絡しておき、乱れていた呼吸を整えると、改めて彼に向き直った。
「お前、どういうつもりだよ」
「別に?久しぶりだから話をしたくなっただけ、静かなところでね」
「…ちっ」
公園内にいくつもあるベンチの1つに腰掛け、隣をポンポンと手で叩くと砂月さんはガタリと音を立ててベンチの端に座り込んだ。
「あれからも、見てたんでしょ?」
「まぁな」
「…私、あなたから見てどうだった?」
色んな人に変わったと言われた。
自分自身も日に日に麗奈から離れて来てるという実感はある。
でも、一番初めに指摘してくれたのはこの人。
砂月さんから見えた私が1番気になっていた。