Let's play our music!【うた☆プリ】
第16章 膨らむ期待
「四ノ宮さん!!」
店の周囲には何が起きたか見ようとする野次馬が大勢いた。
その中を掻い潜り、なんとか店の前に来ると、そこに広がっていた光景は私の予想を肯定していた。
「ちっ、見てんじゃねぇよお前らァ!!」
店の前で苛立ったように大声を上げるふわふわの髪の青年。
それは眼鏡をかけていない四ノ宮さん。
そう、つまり砂月さんなのだった。
「眼鏡は…っ?!」
とりあえず、砂月さんを鎮めるには眼鏡が必要不可欠だと素早くあたりに目を走らせる。
しかし目的のものは見当たらない。
私の顔に明らかな焦りが浮かび上がるのがわかった。
眼鏡を探さないといけない。
でも、砂月さんから目を離すわけにもいかない。
どうしたら…。
「、眼鏡探してるんでしょ?」
「っ!!」
「俺が探しておくよ、だから君は…那月をお願い」
肩に置かれた手。
共に聞こえた声はついさっきまで一緒にいた人。
勝手に走り出した私を追って来たようだ。
「何で私の思ったこと…」
「勘かな?…何てね。ほら、早く行って!」
眼鏡のない四ノ宮さんを見て察したのだろうか。
おそらくテレビでしか砂月さんを見たことがない音也にとっては驚きの光景だろうに、冷静に私を行かせようとするあたり、彼は私より冷静だった。
「…ありがとう、音也!」
そんな彼に私も平常心を取り戻す。
そうだ、こんなところで慌てている暇はない。
私は砂月さんが暴走しないように見ていなければならない。
その間に音也が眼鏡を見つけてくれると信じて。
去り際に振り返ると、太陽のような笑顔でピースを見せてくれたあの人を信じて。