Let's play our music!【うた☆プリ】
第16章 膨らむ期待
「そうだ、私音也の歌好きだよ」
「えぇ?!何だよ突然」
「一番最初のテストの時、偶然見たんだよね。陽だまりみたいな人だなって思ったのよく覚えてる」
「あはは…なんか、照れちゃうね」
お世辞でも何でもなく、楽しそうに歌う彼の様子を見ていたら心がほっこりと温まるのを感じた。
素直に、思いのままに歌う彼に魅力を感じたのだ。
それをそのまま伝えると、照れたように頬を赤らめる。
「音也ってば真っ赤だよ?」
「もー…でも、俺も好きだよ。の歌。」
「ちょ、仕返し?やめてよ」
「あはは、そうだよ!でも好きなのはホント。…俺さ、ここに来る前は落ち込んでる時とかいつも君の歌聞いてたんだ」
「私の歌?」
「そう!聞いてると、こう…何て言えばいいのかな。言葉が心に染み入ってきて、君に包まれているような気がして安心できたんだ」
音也と話すことはあまりなかったから、そんな事は初耳だった。
隣に座る彼の顔をちらりと見ると、昔を懐かしむようにどこか遠くを見つめている。
その表情から、過去に色々あったことがうかがえた。
「音也に会う前から音也のこと助けてたなんて、歌って良かったと思うよ、ありがとう」
「こちらこそありがとう!へへっ何か改まると照れるね」
「つられちゃうから照れないでよ…ふふっ」
だんだん何がおかしいのかもわからないのに笑い出してしまう。
こんな風に真面目な話をすることも学園ではあまりないから、らしくないとお互い思っているのかもしれない。
「だからさ、俺…」
そんな中音也が口に出そうとした言葉は突然聞こえた何かが倒れたような音によって掻き消される。
「?!」
「何だ?」
音のした方は、四ノ宮さんがいた店があった方。
「……まさか、」
嫌な予想が頭に浮かび、いてもたってもいられなくて走り出した。