Let's play our music!【うた☆プリ】
第16章 膨らむ期待
街に出てきた私達が最初に向かったのはショッピングモール。
とりあえず一通りの旅行道具はここで揃うだろうということでやって来たのだが、
「……早速か」
「いやぁ、速すぎて追えなかったよ…」
迷子をなくすためのグループ分けだったのに来て早々四ノ宮さんと別れてしまった。
というのも向こう側に可愛いグッズ店が見えたようで、着いた途端に走り出してしまったのだ。
一応居場所は分かってるし、楽しそうな四ノ宮さんを邪魔するのも可哀想なので、近辺を散策してみることにしたのだが。
「あそことかどう?新しい服とか見てみるのも良いと思うよ」
「そうだね、行ってみよう」
近くにあった服屋に入ると、そこはどうやら音也のお気に入りのブランドだったらしい。
目を輝かせて選び始めた。
「これカッコいいなぁ…!あ、でもこっちのジャケットも良い…」
「…」
その姿は今時の男子学生そのもの。
普段真剣に音楽に向かっている彼しか見ないので、こういった様子が見えるのは結構新鮮なものがあった。
「音也、これなんか良いんじゃない?多分あなたに映えるよこの色」
「おお!これも良いね!どうしよう、迷うよ〜」
「ふふっ…行くのは南の島だってことは忘れないでね」
「あ」
音也が見ていたのは春物のバーゲン。
季節の変わり目は前シーズンの物を片そうとそこら中でセールをしているが、この店も例に漏れず割引がされていたのだ。
安いなんて表示を見たらそっちを見てしまうのは当たり前。
でもこのままだと夏季合宿には持って行けそうにない服を買いそうだったので、一言言っておこうとしたのだ。
ようやく今回の用事を思い出した彼はとても残念そうに服を戻す。
危なく必要な物が買えなくなるとこだったと息をついた音也は出ようと私の手を引いた。
「あーあ、あれ欲しかったなぁ」
「どうしても欲しいなら買ってもいいんじゃない?」
「いや、関係ないもの買ったらトキヤに怒られちゃう」
「あはは、確かに」
しばらくかかりそうな四ノ宮さんを待つため、近くのベンチに腰掛けた私達。
なんとなく始まる会話は時折プツリと途切れてしまうものの、あまり気まずくはなかった。