Let's play our music!【うた☆プリ】
第15章 あの人の正体
Aクラスも私たちのクラスと様子はあまり変わっていなかった。
夏季合宿、そしてペア。
顔を輝かせて、緊張に固めて、その話題をしていた。
「…あれ、皆どこだろ」
「あ、あの!さんですか?」
「曲聴いたよー!凄いね、憧れる!」
しかし教室に目当ての人達は見当たらず、入り口で挙動不審に視線を彷徨わせていると、突然数人の生徒に囲まれた。
口々に言われるのはこの間流した曲の感想。
そのどれもが賛辞で、嬉しいことは嬉しいのだが身動きが取れなくなってしまう。
皆の居場所も聞くことが出来ず、あわあわと慌てふためいていると、突然後ろに引っ張られた。
「すみません、入り口で集まってしまうと他の方の迷惑になります」
「トキヤ!」
「…はぁ、全くあなたもあなたです。普段のはっきりした物言いはどうしたんですか」
「ご、ごめんなさい…」
トキヤの助けにより人ごみから脱すると、ちょうど教室にやってきた探し人達と出会う。
買い物の話をすると、皆目を輝かせて頷いてくれた。
「行く行く!マサも行くよね?」
「そうだな…必要な物を買わねばなるまい。四ノ宮はどうするのだ?」
「僕も行きますよー!ハルちゃんはどうしますか?」
「わ、私も行きたいです!友ちゃんは?」
「勿論、行くよ!」
順番に意向を確認する彼らの息のぴったり具合に笑ってしまった。
じゃあ全員参加ってことで。
そう伝えとくねと教室を後にしようとしたけど、ふと気になったので足を止める。
春歌が心配そうにある1点を見つめていたのだ。
「…春歌?」
「へ?な、何ですか?」
その視線の先を追うと、そこには静かに読書をするトキヤの姿が。
なるほどね。
何となく意図を察した私は、彼の席に歩み寄る。
「トキヤは?」
「…何がですか?」
「買い物。話聞こえてたでしょ?」
「…いえ、今度の休日はちょっと」
「そっか、残念」
「すみません…誘っていただいたのに」
「いいのいいの、仕方ないよ……仕事でしょ?」
「……」
声を潜めて告げた予想に彼は小さく頷く。
気にしないでと思いを込めて肩を軽く叩くと、少しだけ表情を緩めてくれた。